第382話 国防費拡大「43兆円」 変化する日本の国防を見る

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


T:1月13日、台湾で総統選挙が行われました。結果は与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が新総統に当選しました。台湾への圧力を強めている中国の動向も気になるところですね。

神様:欧州ではロシアによるウクライナ侵攻が続き、中東ではイスラエルとパレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスの戦闘などがあり、不安定な世界情勢下にあります。日本でも今、防衛の観点で大きな変化を迎えています。今日は「国防」について見ていきましょう。

T:国防を投資の観点から見るということですか?

神様:日本にももちろん、国防に携わる企業があります。国防・防衛については、航空・宇宙分野とともに見られることが多く、数多くの関連企業があることがわかるでしょう。

T:防衛関連の事情を知るためには、何を見ると良いでしょうか?

神様:防衛白書を見ましょう。令和5年版防衛白書では、「ロシアによるウクライナ侵攻の教訓」と題して重要なことが述べられています。すなわち、「ロシアがウクライナを侵略するに至った軍事的な背景としては、ウクライナのロシアに対する防衛力が十分ではなく、ロシアによる侵略を思いとどまらせ、抑止できなかった、つまり、十分な能力を保有していなかったことにある」とのことです。防衛省は「ウクライナは、ロシアを抑止できなかったため、数万人が死傷する結果に陥った」と主張しています。

T:率直と言いますか、とてもストレートな表現ですね。

神様:戦争を未然に防ぐことが大切なのは当然のことです。しかし、外交努力を尽くしても戦争に至ってしまうことがあります。最悪の結果を防ぐために何ができるかを考えなければなりません。

T:確かにその通りですね。今、それだけ危機が身近に迫っている事態があるということなのかもしれませんね。

神様:岸田首相は昨年、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3つの文書を閣議決定しました。首相は記者会見で「今後5年間で緊急的に防衛力を抜本的に強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施する」こと、「令和9年度には、抜本的に強化された防衛力とそれを補完する取組を合わせて、GDPの2%の予算を確保する」ことなどを述べています。国家・国民を守るために防衛のあり方が変化する状況を、私たちは目の当たりにしていると言えます。

T:なるほど。

神様:現代では、弾道ミサイルや巡航ミサイルによる大規模なミサイル攻撃、ドローンや無人機などによる非対称的な攻撃、そして情報戦などを組み合わせたものが主流となっています。私たちはこれらの「新しい戦い方」に対処していかなければなりません。日本は、防衛上必要な機能・能力として、「7つの柱」を重視して取り組む方針です。

T:7つの柱ですか?

神様:例えば、攻撃されない安全な距離から相手部隊に対処する能力を強化する「スタンド・オフ防衛能力」、空からの脅威に対応するための能力を強化する「統合防空ミサイル防衛能力」、無人装備による情報収集などの「無人アセット防衛能力」などがあります。

T:スタンド・オフとは何でしょうか?

神様:「スタンド・オフ」とは、一般的には「離れている」といった意味があります。日本は東西南北それぞれ約3000kmに及び、四方を海に囲まれています。各国の各種ミサイルの性能が向上している中、目前の”脅威の外”にも対処する力が求められています。

T:これらに対処するために、今後の5年間で必要な経費を積んで強化していくのですね。ここで、防衛・航空・宇宙関連の企業が重要な役割を担うことになるわけですか。

神様:その通りです。さらには、現在の自衛隊が継続して戦闘を行う能力は十分でないため、弾薬の確保や装備品の維持整備なども重要とされています。装備品関連の企業にとっても、追い風となるでしょう。

T:”備え”が平和のための備えで終わることを願いたいです。

(この項終わり。次回1/24掲載予定)

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