「今、立っていられるのが奇跡なんです」 ヘルニアに夢を潰されそうになった24歳が流した感謝の涙【プロテストで見たドラマ】

先週行われた日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の最終プロテストでは、新たに21人のルーキーが誕生した。うれし泣き、悔し泣きが入り混じった会場で、特に印象に残った合格者を紹介する。

「ゴルフを…“諦めさせてくれなかった”両親に感謝します」。24歳の木村怜衣(れい)は、トータル6アンダーまで伸ばして合格が確実になった最終ラウンド後、この1年間のことを思い出し、こみ上げる涙を抑えることができなかった。

「日常生活を送れるかも不安でした」。その原因になったのは、3年ほど前から患っていた椎間板ヘルニア。1年ほど前に本格治療し今回のプロテストを受験していたのだが、苦痛に顔をゆがめていた時期のことを、こう振り返る。

「ピークだった去年は、おしりが無数の針に刺されているような痛みでした。うつぶせでずっと寝ていたいくらい。一昨年よりも去年は出ている椎間板が倍の量になっていて、いよいよだなって思って治療に踏み切りました」。その1年前は、「体もゴルフもボロボロ」というほどの状態。そして無理を押して出場したプロテストの1次予選は、トータル13オーバーとなすすべもなく敗退した。

木村の出身地は宮城県仙台市だが、そこに居を移してきたプロゴルファーの北田瑠衣、キャディの佐藤賢和氏夫妻と知り合ったことが運命を好転させるきっかけになる。2人との縁から青山充コーチとつながり、前出の1次予選を終えた後から師事することになった。仲宗根澄香らレギュラーツアーで戦う選手も育てる同氏からは、ゴルフよりもまずは「体が大事」と、ヘルニア治療のための病院も紹介してもらうことに。そして、椎間板内にヘルニコアという薬剤を注入することで神経の圧迫を弱める治療法に乗り出した。

「それまでは痛み止めでごまかしてきたんですけど、今はまったく痛くないんです。歩けるようになりましたし、ゴルフもできるようになりました。去年は夜も眠れなかったほど。今、立っていられるのが奇跡なんです」。その表情は晴れやかだが、真っ暗闇のなかでもがいていた昨年は、練習もまともにできず「心も病みました」という状態にまで落ち込んでいた。そこからわずか1年でプロテストという難関を乗り越えることになったのだから、驚かされる。

冒頭の言葉は、『今年のプロテストで合格できた一番の要因』を聞かれた時の答え。「今のコーチに出会えたことと、コーチを紹介してくれた北田瑠衣ご夫婦のおかげ」に続いて出てきた感謝の思いだった。いろいろな人に支えられ、プロとしての第一歩を踏み出すことができる。

「痛みがないことで心も楽になりました。これまでは『明日の朝起きたらベッドから起き上がれないかも』ということも考えていました。そういうことが無くなって、だいぶメンタル面も復活しましたね」。“奇跡の合格劇”。万全な体で、長く続いていくツアー生活を突き進んでいってもらいたい。

木村怜衣(きむら・れい) 1999年10月18日生まれ、宮城県仙台市出身。167センチ ■ゴルフ歴/8歳〜 ■得意クラブ/パター ■1W平均飛距離/250ヤード ■趣味/漫画を読むこと ■スポーツ歴/バスケットボール、水泳、陸上 ■プロテスト受験回数/6回 ■目標とするゴルファー/原英莉花

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