第371話 コロナ禍前の売上げ超えた 「外で朝食」需要が拡大する理由とは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのレストランで投資談義を行っています。


T:ホテルのビュッフェで朝食をとりながら、朝の投資談義もいいですね。

神様:朝食をきちんと食べることは大事なことです。糖尿病などの生活習慣病の予防につながりますし、規則正しい生活のリズムを作ってくれます。

T:昨今の健康志向の高まりの中で、朝食をとることの大切さも見直されてきていますか?

神様:実は今、外食・中食市場では「朝食」が注目されています。コロナ禍以降、朝食を外食でとる人が増えていることが要因です。エヌピーディー・ジャパン CRESTの調査によると、2022年4~6月期以降で朝外食が伸びており、コロナ禍前の2019年の売上を超えたことがわかりました。

T:それは知りませんでした。なぜでしょうか?

神様:コロナ禍により外食の利用は他の食事同様に減少していましたが、通勤や出張などが通常に戻るにつれて需要が戻り、利便性の高い飲食店の朝食利用が増えたと考えられます。また、朝食は1人での利用が多く、コロナ禍で変化した行動の影響も受けづらいところがあります。朝食に力をいれる店舗も増えているようです。

T:コロナ禍で「コロナ太り」が増えたという報道もありました。外出の機会が減少して運動不足になり、体重が増加してしまった人の中には運動や規則正しい食生活などの生活習慣を整えることに励んでいる人も多いかもしれませんね。

神様:ぐるなびが2021年に朝外食についてアンケート調査を行ったところ、月に1回以上朝外食をすると回答したのは20代女性、30代男性と50代男性でそれぞれ約30%となり、やや高い傾向にあることがわかりました。男性は平日の利用が多く、女性は平日・休日ともに利用される傾向があり、利用する店舗ではカフェや喫茶店が最も多く、次に多いのがファーストフード店でした。

T:30代、50代男性が多いのは意外に感じましたが、やはり健康に気を使ってのことでしょうか。

神様:健康意識もあるでしょう。実はこの朝外食調査はコロナ禍前から盛り上がりを見せていました。外食・中食主体の朝食市場の規模は2014年以降右肩上がりで伸び続けており、特に2014年以降で朝食市場に活性化をもたらしたものがあります。何だかわかりますか?

T:何でしょうか?そう言えば、ファーストフードなどでコーヒーのキャンペーンが盛り上がっていたような記憶がありますが。

神様:いい視点ですね。コンビニでセルフ式のコーヒーが販売され始めたのが2013年です。これが朝食の活性化をけん引したと見られています。

T:なるほど。気軽に外でおいしい朝食をとれる環境が整ってきたということですね。

神様:実は朝外食の盛り上がりは日本だけでなく、世界的な潮流のようです。

T:なぜでしょう?これはコンビニのコーヒーが要因ではないですよね。

神様:共働き世帯の増加や単身世帯の増加など、社会構造の変化が要因です。少子高齢化は日本だけではありません。米国では2021年、18歳未満の子どもを持つ夫婦世帯が過去最低を記録し、単身世帯は過去最高を記録しました。ドイツなど欧州でも単身世帯は増えています。それに伴い食事をめぐる習慣も変化してきていると言えるでしょう。

T:つまり、家族みんなで食卓を囲むことが当たり前だった習慣が、世界的にも”ひと昔前のもの”になりつつあるということですか。

神様:今後も朝外食の需要はより拡大していくと見られます。最近では、宿泊特化型のホテルでも朝食内容にこだわりを持つことで競合ホテルとの差別化を図っています。カフェやファミレスなどのモーニング需要も増えていくかもしれません。朝外食が外食市場の活性化に貢献することを期待したいところです。

(この項終わり。次回11/1掲載予定)

提供:いちよし証券
「兜のささやき」全話はこちら
○当記事は各種の信頼できると考えられる情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保障するものではありません。
また、今後予告なく変更される場合があります。

商号等/いちよし証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第24号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会