「仏になれた(笑)」 勝みなみが“超アウェー状態”のなか見せた強スキルと強メンタル

<AIG女子オープン 3日目◇12日◇ウォルトン・ヒースGC(イングランド)◇6881ヤード・パー72>
 
地元イングランド出身のチャーリー・ハルと回った3日目。まるで最終日最終組にいるような錯覚にも陥るほどの大ギャラリーに囲まれても、勝みなみは堂々とコースを歩き、時折ニコリと笑うことも忘れない。声援の多くは、地元勢のメジャー制覇を期待する人々の声だったが、その雰囲気を味わいながら、「すごい楽しかった」という気持ちで1ホールずつ進んでいった。
断続的に吹く強風により、ティショットの精度を奪われ、苦しい時間が大半ともいえる一日を過ごした。フェアウェイキープ数はわずかに6回。15番までにボギー4つを並べ、なかなかバーディも奪えないという展開になった。だが、そんな逆境をアプローチとパターで何度もしのぎ続ける。おそらく勝でなければ、もっとボギーが来ていてもおかしくないと感じるほどの、“綱渡り”の18ホールだった。
 
例えば1番でボギーを叩いた後の2番。ここではティショットを右に曲げ、さらに2打目もグリーン右手前のラフに落ちた。運が悪いことに、ジャンプをしてようやくピンが見えるかどうかというくらいの高い斜面が目の前にはある。ピンは右奥で、そこまではかなり距離もある状況。しかしこれを絶妙なアプローチで1メートルにまで寄せると、パーを拾った。4番もグリーン右手前ラフからのアプローチを1.5メートルまで寄せて、なんとかセーブしたホールだった。
 
「最近はショットがあまりよくないことが多くて、アプローチ、パターでどうにかするプレーが続いていた。その経験が生きました」。ボギーこそ叩いてしまったものの、7番もフェスキューからの2打目がグリーン右手前バンカーに落ち、さらに上り傾斜に続いていくアゴ付近に止まるという絶体絶命の状況から、最後2メートルを決めた“ナイスボギー”だった。「あのパットをきっかけにパターのリズムがすごくよくなったような気がする」。これ以降も10番で5メートル近いパーパットをねじ込むなど、とにかくしぶといゴルフを続けた。
 
そんなプレーが出るたびに、ハルを応援しているギャラリーからも大きな拍手が送られる。本場のギャラリーは、いいプレーには目がない。一方で、1組後でプレーしていた最終組は閑散としたムード。「最終組には、全然人がいなかったですよね(笑)。ひさびさにああやってたくさんの人にプレーを見てもらえました」。反応があるなかでのプレーは、やはりひと味もふた味も違う。そんな“アウェー状態”で戦うなかでは、悟りの境地にもたどりついた。「あそこまで振り切ってくれたから、なんか“仏”になれた(笑)。なんでも許せるみたいな」。
 
終盤の16番パー5では、残り187ヤードからのセカンドを8番アイアンでピン奥6メートルにつけると、それをねじ込んでイーグルを奪い、ようやくここで少しスコアを戻すこともできた。「16番があったから笑顔で終わることができた。あそこに救われましたね」。この一撃で、一時はトータル1アンダーまで下がっていたスコアをトータル3アンダーまで戻し、14位といい位置で最終日に向かうことができる。
 
「明日はまた違う1日にしたい。1つでも伸ばして。ショットが安定していない部分は、プレー中に試行錯誤して、いろいろまた変えていってでも、いいものが見つかればいいな」。どんなにショットが乱れてもなんとかしてしまう技術の高さと、ちょっとやそっとのことでは動じない精神力。勝の強さにつながる大事な要素が垣間見られる、そんな一日になった。(文・間宮輝憲)

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