第353話 日本の強みフル活用 次世代電池「ペロブスカイト太陽電池」とは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、コーヒーの香る喫茶店で投資談義を行っています。


神様:突然ですが、Tさんにクイズです。地下資源に乏しい日本ですが、世界シェアの3割を占め、世界2位の生産国となっている資源があります。何だと思いますか?

T:全くわかりません。日本にもそんな資源があるのですか。

神様:答えは「ヨウ素」です。

T:へえ、知りませんでした。なぜ、そんなクイズを出されたのですか?

神様:政府は2050年に温室効果ガスの排出量を実質的にゼロとする「カーボンニュートラル」の実現を目指しており、2030年における再生可能エネルギーの電源比率を36%から38%とする目標を掲げていますよね。そこで、この日本のGX(グリーン・トランスフォーメーション)において、ヨウ素が重要な鍵を握るかもしれないのです。

T:このお話はこれまでも度々出てきています(第339話 世界市場規模276兆円へ カーボンニュートラルの”切り札”に高まる期待)から、覚えています。資源の乏しい日本がこの厳しい目標を達成するには技術革新が必要ですよね。

神様:その通りです。新たなエネルギーミックスの実現に向け、再生可能エネルギーの中でも本命とされているのが「太陽光発電」です。政府は、国内発電量に占める太陽光比率について、2030年度に14%から16%の目標を掲げています。2022年度の進捗はと言いますと9.9%でした。

T:道半ばといったところですね。今後さらに拡大できるのでしょうか?

神様:残念ながら、太陽光発電の適地不足という問題が出てきています。

T:確かに太陽光発電は広いスペースを必要とするイメージがありますが、これは解決できないのでしょうか。

神様:そこで現在期待されているのが、次世代太陽光電池と言われる「ペロブスカイト太陽電池」です。岸田総理は4月に官邸で開催された会議にて「次世代の太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池について、日本が強みを持つ技術・材料を活かし、量産技術の確立、需要の創出、生産体制の整備を三位一体で進め、2030年を待たずに早期に社会実装を目指す」と表明しました。

T:ペロブスカイト?…初めて聞いた名前ですが、どんな太陽電池なのでしょうか?

神様:太陽電池にも様々な種類がありますが、最も多いのはシリコン製半導体を素材とするシリコン系太陽電池です。ペロブスカイト太陽電池は「有機系太陽電池」と言われ、ペロブスカイト結晶を素材として作られます。塗布や印刷技術で量産が可能なため低コスト化が期待でき、柔軟性があり軽量化も可能です。また、様々な角度から入った拡散光で発電でき、光が直接当たっていない場所や、雨や曇りの日でも発電できます。

T:なるほど。これまで設置できなかった場所にも設置できるようになり、スペースの解決策になるかもしれないのですね。ひょっとして、これは日本で開発されたものですか?

神様:察しが良いですね。その通りです。今は世界中で研究開発が行われています。まだ開発途上であるため市場も小さく、現在の市場規模は1,000億円未満です。しかし、2035年には1兆円規模となる見通しがあります。

T:ひょっとして、この太陽電池に「ヨウ素」を使うのですか?

神様:さすが、おっしゃる通りです。ヨウ素はペロブスカイト太陽電池の主要な材料となります。この次世代太陽電池は、日本の資源による日本生まれの太陽電池と言えるでしょう。

T:なるほど。これは大きなチャンスですね。この太陽電池のデメリットはないのですか?

神様:耐久性が低いこと、大面積化が困難なことのほか、まだエネルギー変換効率が低く、さらに向上させていく必要があることなどがあります。これらの課題を解決し、日本の強みをフル活用することができる技術と材料によって、日本が次世代太陽電池の市場をリードすることを期待しましょう。

(この項終わり。次回6/21掲載予定)

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