第352話 日本のバリアフリー化の現状は?少子高齢化で設備投資増に期待

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内にある神社の境内を散歩しながら投資談義を行っています。


T:岸田総理は6月1日、「こども未来戦略会議」で「こども未来戦略方針案」を公表しました。報道によると3兆円以上の予算を確保して行われるもので、総理も「次元の異なる少子化対策」と称しています。内容が気になるところです。

神様:総理は、少子化対策は若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでがラストチャンスであると考えているようです。あと6~7年、タイムリミットが迫っています。

T:今後の動向に注目ですね。

神様:ところで、「バリアフリー」という言葉を聞いたことがあると思いますが、どのような意味か知っていますか?

T:そうですね、高齢者や障害者の方々が日常生活で支障を来さないような、安全な建築物や交通手段などのあり方を指すものと考えています。

神様:おおむねその通りです。日本では2006年12月に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、通称「バリアフリー法」が施行されました。国土交通省によれば、「バリアフリー法」は高齢者や障害者の施設の利用や移動において、利便性・安全性の向上の促進を図り、公共の福祉の増進に資することを目的としています。ハード・ソフト両面での施策を充実させ、すべての人々が暮らしやすい「ユニバーサル社会」の実現を目指しているのです。

T:ユニバーサル社会とは、バリアフリーが十分に実現された社会ということですか?

神様:2018年に施行された「ユニバーサル社会実現推進法」では、ユニバーサル社会とは「障害の有無、年齢等にかかわらず、国民一人一人が、社会の対等な構成員として、その尊厳が重んぜられるとともに、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会の確保を通じてその能力を十分に発揮し、もって国民一人一人が相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する社会」と定義されています。

T:バリアフリーもユニバーサル社会も、超高齢化社会にある日本にとって、とても大切なことですよね。

神様:高齢者や障害者だけではありませんよ。例えば、ベビーカーの扱いについてもバリアフリーに含まれます。駅に行くと、ベビーカーを使う子育て中の人や車椅子などを使う足の不自由な人のために、大きなエレベーターが設置されていますよね。これもバリアフリー化のひとつです。

T:なるほど。子育てにも関連してくるのですね。

神様:昨今は外国人旅行者がスーツケースを持って移動することも増えています。エレベーターの大型化はさらなる利便性の向上につながるでしょう。日本にいるすべての人にとって過ごしやすい社会を目指すのがユニバーサル社会です。

T:「子育てしやすい社会を」と考えると、実現できていない課題が色々ありそうですね。例えば、授乳やおむつ交換などをするための場所はまだ多くないと感じます。

神様:そういった「ベビーケアルーム」の拡充も今後実現されていくでしょう。「こども未来戦略方針案」においても、こども・子育てにやさしい社会づくりのため、公共交通機関などでの取り組みを推進していくことがしっかりと盛り込まれています。

T:子育てしやすい社会はもちろんのこと、年齢や障害の有無に関わらず誰もが暮らしやすい社会の実現に向けて、まだまだ足りない部分がありますね。

神様:20年前と比べれば公共交通機関などのバリアフリー化は着実に進んでいます。しかし、十分ではありません。今後バリアフリー化がさらに進んでいくにつれて、それらの設置に関連する各企業においては、設備投資の増加も期待されるでしょう。投資においても、バリアフリー化の動向に大いに注目していきましょう。

(この項終わり。次回6/14掲載予定)

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