第334話 2023年、DXは普及期へ DX推進に大切なこととは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内のカフェで投資談義を行っています。


T:毎年恒例の質問になりますが、今年はどんな分野に注目しますか?

神様:DX(デジタルトランスフォーメーション)です。2023年は、各企業でDXがさらに加速する年となるでしょう。

T:それはなぜでしょうか?

神様:国内を見ると、受託システム開発の売上高が拡大しています。働き方改革の推進、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした社会のデジタル化が進んでいますし、製造業においては人手不足を補うためにロボットの活躍の場が増えています。IoTやクラウドコンピューティング技術の進歩も企業のDX導入を後押ししています。

T:なるほど。しかし一方で、企業のDXと聞いてもピンと来ない人もいるように思います。自社のDX担当部署が何をしているのかよくわからない、DX担当となった人が何をしていいのかわからない、または自社の生産性向上や業務の効率化を目指してDXを推進しようとしたがうまくまとめられず停滞してしまった、など私の周りでもこれらの話はよく聞きます。一体何が原因なのでしょうか?

神様:AIやIoTを導入すればDXなのか、業務効率化ができればDXなのか、と問われるとそうではありません。DXとは、企業がデータとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズをもとに製品やサービス、ビジネスモデルを変革することを言います。そもそも「変革」なのですから、そう簡単なことではありません。業務だけでなく、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、企業の競争優位性の確立を目指すのがDXです。

T:とてもイチ担当者に担えることには思えませんね。

神様:様々な人の協力が必要です。とりわけ良い技術者やデザイナーなどの協力は不可欠です。以前紹介したアジャイル型開発(第322話 DX化推進で注目される「アジャイル型開発」とは?)が効果を発揮することもあるでしょう。2021年9月1日にデジタル庁がスタートしましたが、その設立経緯を覚えていますか?

T:新型コロナウイルスの感染拡大への対応において、政府や自治体のデジタル化の遅れ、人材不足、システム連携が不充分なために非効率的で煩雑な手続きなどが発生し、デジタル化の遅れによる様々な課題が明らかになりました。この課題を政府主導のもとに解決する目的があったかと思います。

神様:当時の菅総理大臣が危機感を覚え「国、自治体のシステムの統一・標準化を行うこと、マイナンバーカードの普及促進を一気呵成に進め、各種給付の迅速化やスマホによる行政手続きのオンライン化を行うこと、民間や準公共部門のデジタル化を支援するとともに、オンライン診療やデジタル教育などの規制緩和を行うことなど」を目指し、デジタル庁が創設されました。民間からの人材も多数登用され、これまでの常識にとらわれることなく改革を進めています。

T:国の巨大な組織を変革するわけですから、その困難さは想像に難くありません。

神様:2022年12月19日には、デジタル庁のホームページ上で、行政手続のオンライン窓口である「マイナポータル」の「実証アルファ版」が公開されました。「アルファ版」とは、ユーザーに実際に使ってもらう実証実験も兼ねたテスト版です。サイト設計や表現が見直され、サイト上で使ってみた意見や感想などのフィードバックを受け付けています。こういった取り組みは画期的であり、実際にテストを繰り返して本当に価値のあるものを見出すプロセスは、本物のDXには大切なものと思います。一度覗いてみることをおすすめします。

T:データの活用の仕方においても、仮説を立てて効果を検証し、顧客が望んでいるものを提供することができれば、ビジネスの変革にも一歩近づきますね。

神様:さて、今年は10月には「インボイス制度」が開始されます。また、12月末には「改正電子帳簿保存法」の施行から2年間の猶予期間が終了します。どちらも経理業務にとっては頭の痛い課題かもしれませんが、DXがさらなる普及期を迎える良い機会でもあります。差し迫ったこの課題をどう乗り越えるか、しっかり考えたいところです。

T:システム開発の関連企業にとってはチャンスでもありますね。活躍に期待したいと思います。

(この項終わり。次回2/1掲載予定)

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