
2022年の男子ツアーを振り返ると、賞金王に輝いた比嘉一貴や比嘉に次ぐ2位の星野陸也ら、20代の選手が活躍する一年だった。ここではツアープロコーチ・石井忍が、国内男子賞金ランキングでトップ10に入った選手たちのスイングを連続写真で分析し23年の活躍を占う。
今回は賞金ランキング7位の大槻智春のスイングを解説。22年は26試合出場し、トップ10回数は9回。「ANAオープンゴルフトーナメント」では通算2勝目を挙げている。
大槻のスイングの特長について石井は「バックスイングは横移動がなく、軸についていえば、1軸スイングです。狭めのスタンスで、軸を保ったまましなやかにスイングしている」と、話す。
特筆すべきは、「切り返しのときにナチュラルな回転で上半身のポジションもすごくいい」ところ。「左腕が地面と平行になるところに下りてきたときに。両ヒザの位置や向きがアドレスの位置に戻っていてクラブと体の距離感を保てている。だから曲がらない」と、石井は続けた。
飛ばしたいと思うとアマチュアは勢いよく振りすぎてしまうことがあるが、大槻の場合はシンプルに、どこまでも自然に体の回転を使って打っている。だから飛ぶし、曲がらないのだ。
「彼のスイングはナチュラルな感じ。ガチガチにつくられた感じがなく、どこを見ても柔らかくて無理がないのでリキミを感じさせません。そこがスゴい」
大槻は22年のドライバーの平均飛距離とフェアウェイキープ率を合算した数値、トータルドライビングで2位を獲得している。飛んで曲がらない秘訣は、ナチュラルな体の回転。リキミを極力排したスイングにある。一見すると強い力が作用しているようなスイングとは裏腹の深い捻転と、縦横左右にブレない1軸のスイングで実現できている。今年も安定したショットで通算3勝目を挙げるに違いない。(文・高木彩音)
■石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。