第333話 2023年こども家庭庁スタート 少子化でもおもちゃ市場拡大の理由

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都心ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


T:あけましておめでとうございます。2023年が始まりました。今年はどんな年になるでしょうか。

神様:2023年は卯年。相場格言では「卯跳ねる」と言われます。過去6回の卯年の日経平均株価を見ると、平均年間騰落率では16.4%の上昇です。回数で見ると、上昇が4回に対して下落が2回でした。

T:4勝2敗というわけですね。

神様:卯年の後は辰年、巳年と続き“辰巳天井”とも言われます。同様に過去の平均年間騰落率で見ると、辰年が28.0%の上昇、巳年が13.4%の上昇でした。格言が必ずしも当たるわけではありませんが、2023年を2024年以降の長期上昇相場に備えた“仕込みの年”と考えてもいいかもしれません。

T:なるほど「仕込みの年」ですね。新型コロナ感染も「5類」への移行が検討され、2020年から続くコロナ禍からまた一歩脱け出す年になりそうです。

神様:政府の動きとしては、4月には「こども家庭庁」がスタートします。5月には広島でG7サミットが開催される予定です。

T:こども家庭庁には、年々深刻化する少子化を食い止める活動を期待したいです。日本経済にとって希望のある、明るい未来を築けるようにしていきたいです。

神様:そうですね。一方で、ビジネスには「問題」を「チャンス」と捉える視点が不可欠です。少子化が進むため、事業や市場規模が縮小すると考えがちではありますが、そうとは限りません。例えば「おもちゃ(玩具)市場」を例に見てみましょう。日本玩具協会によると、2021年度の日本国内の玩具市場は、前年度比で8.5%増となる8,946億円(希望小売価格)となりました。2001年以降の市場規模を見ると、確かに横ばいや縮小が続いた時期もありましたが、近年は拡大基調です。

T:15歳未満の人口が毎年減少しているにも関わらず、ですか。何が起こっているのでしょうか?

神様:商品分野別で見るとよくわかります。2021年度の商品分野別での伸び率1位は「カードゲーム・トレーディングカード」で、前年度比で45.6%増の558億円となりました。

T:なるほど。トレーディングカードですか。

神様:遊んだことはありますか?トレーディングカードは、カードを収集することや交換することを目的としています。種類もゲーム、アニメのキャラクター、スポーツ選手やアイドルなど多種多様です。特に市場のけん引役となっているのは「ポケモンカードゲーム」、「遊戯王 OCG」、「デュエル・マスターズTCG」などです。

T:残念ながらあまり知識はありませんが、人気があることは知っています。

神様:トレーディングカードは、発売開始から20~25年が経過しています。そのため、子どもだけでなく親世代も楽しめ、父と子の2世代間で遊ぶこともできます。最近ではレアカードの高額取引も話題になり、人気に拍車がかかったことも背景にあるでしょう。玩具市場全体に占める割合も、2021年度は大きく伸びました。

T:子どもだけでなく大人も楽しめる商品にすることで、市場を広げたのですね。

神様:ターゲットは世代だけでなく、地域も拡大されていきます。コロナ禍を契機として、海外で日本のアニメの認知度が向上しました。水際対策の緩和や円安効果により、今後はインバウンド消費の回復が見込めるでしょう。世界的にも、カードゲーム・トレーディングカードの更なる人気化に期待が高まっています。新規参入企業や二次流通の企業も含めて、今後の活躍に注目したいところです。

T:人口が増加していく世界に市場が広がると、日本の少子化という不安要素も薄まりますね。現状を冷静に分析し、いかにチャンスを作るか。勉強になりました。「卯跳ねる」――今年も良い年にしていきましょう。

(この項終わり。次回1/18掲載予定)

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