
畑岡奈紗、渋野日向子ら強豪ぞろいの黄金世代の先頭を常に走ってきた24歳がいよいよ海を渡る。アマチュア時代に「KKT杯バンテリンレディス」を制するなどツアー通算8勝の勝みなみが、昨年12月に行われたQシリーズで5位に入り米ツアーの出場権を獲得した。そんな世界最高峰の舞台に挑戦する勝に迫る。今回は挑戦理由とQシリーズの戦い。
プロ入り当初は日本での戦いに重きを置いていた勝だったが、米ツアーに出場するごとに心は動いた。そして海外挑戦への決意を固めたのは、未知なるウイルスが全世界で猛威を振るっていたときだった。
「試合がなくなったときにトレーニングをやると決めました。その結果、20ヤードほど飛距離が伸びて、日本でプレーしているとほかの選手たちよりも前に行っていた。これなら(米ツアーで)通用するかなと思いました」
飛距離だけでなく体力がついたことで成績も上昇し、併せて世界ランキングも浮上。「Qシリーズから行ける順位になったら行こう」というノルマをクリアして、満を持しての挑戦となった。
72ホールノーボギー優勝、日本女子オープン連覇を手土産に“日本代表”の一人として臨んだQシリーズ。だが、勝自身は重荷を背負っていなかったという。
「アメリカがダメでも日本があるという余裕がありましたね。ダメだったら恥ずかしい、という気持ちは全くなかったですね。環境が変わったところでうまくいかなかったら、今の自分の実力では対応できないということ。恥ずかしくはないですね。それは来てみないと分からない。だめなら、またレベルアップしてくるという感じでした」
ダメならダメで仕方ない。肩ひじ張らずに「アメリカ合宿のつもりで挑みました」と楽しむことを心掛けた。変に情報を入れずに「目の前の一打に集中した」ことも良い方向へつながった。「上位に入る重みを知らないからこそできたのかなと思います。一緒に回っている子たちは緊張していて、深呼吸している音が聞こえてきましたから」。余裕は持っても、それは油断ではない。「そういった同組の選手を見て余計にやる気が出ましたね。もがいている人たちがいるなかで、私ももっと頑張りたいと思った」と自分を奮い立たせた。
異国の地での生活も楽しんだ。「ハンバーガーだったり、ピザだったり意外といけましたね(笑)」と食事も苦にしなかった。2週目のホテルにはドライヤーがなく、髪の長い勝にとっては一苦労だったが、「ご飯を食べながらタオルで拭いて入れば乾くので。次は絶対に持っていきますけど(笑)」と笑い飛ばせるほどの余裕もあった。
144ホールに渡る過酷な戦いで感じたのは、トレーニングはウソをつかないということ。「体力勝負だなと思っていましたが、トレーニングしてきた結果が出たなと思います」。通用した飛距離以上に体力面での充実を感じた8日間だった。それは来季への手応えでもある。
「正直びっくりしていますね。まさかこんな上位で終えられると思っていませんでした」。想像以上に通用したことは好材料。終わった直後に「出るからには全試合勝ちたいですね(笑)」と言えるほど完ぺきなQシリーズだった。