2025年の日本代表活動は11月18日(火)のボリビア代表戦がラスト。奇しくもこの一戦は森保一監督の日本代表指揮100試合目という節目のゲームでもある。
「個人的には出る気持ちでいます。100試合目というのを考えると、やっぱり勝ってお祝いしたいところもある。個人的にはチャンスがあるつもりで、高いパフォーマンスを出せるように準備していければいいかなと思います」とキャプテン・遠藤航は気を引き締めた。
遠藤が闘志を燃やすのにはワケがある。自身が欠場した10月のパラグアイ代表、ブラジル代表との2連戦、そして直近のガーナ代表戦で進境著しい佐野海舟が出色のパフォーマンスを披露。「ボランチの序列変更か」と周囲が騒がしくなっているからだ。実際、佐野は遠藤自身が一気に世界的価値を引き上げたブンデスリーガで活躍中。今季のデュエル勝利率は113回で2位という状況だ。かつて2020−21、2021−22シーズンに連続してデュエル王に輝いた遠藤の“後継者”というに相応しい実績を残しているのは間違いない。
「日本人のボランチのイメージって今、“奪える選手”が多くなっているのかなと。少し前の日本人のボランチ像とはちょっと違うような形というか。今までも守備的MFみたいな人たちは出てきましたけど、ブンデスだったり、欧州5大リーグで当たり前にやっていることはなかなかなかった。そこは今のサッカーのトレンドでもあるし、勝ち残っていくためのスタイルになっているのかなと思います」
遠藤はしみじみとこう語ったが、確かにかつての日本人ボランチと言えば、中田英寿、中村俊輔、小野伸二、遠藤保仁のように“攻撃面で違いを作れる選手”というイメージが強かった。しかしながら、時代は変わり、ボール奪取力や局面に強いボランチが求められるようになってきた。ここまでデュエルに秀でるメンバーがズラリと並ぶ代表は初めてかもしれない。その筆頭である遠藤も、世界最高峰レベルでまだまだやれるところを強く示さなければならないのだ。
「ボランチの層が厚くなってきているのはいいことだし、自分もそこに貢献しているという考え方もできます。ただ、スタメンを譲るとか、そういう負けん気のところは出していかきゃいけない」とキャプテンはプライドをにじませた。守備陣を力強く支え、統率した9月のメキシコ戦終盤のように「やはり遠藤は別格だ」と思わせるような仕事ぶりをボリビア戦では見せつけること、今の遠藤にとっての責務なのである。
そして、その先に7カ月後に迫ったFIFAワールドカップ26がある。所属するリヴァプールではプレミアリーグ、UEFAチャンピオンズリーグでの先発はなく、リーグ戦の出場も10月4日のチェルシー戦から遠ざかっている。カラバオカップでは3回戦のサウサンプトン戦、4回戦のクリスタルパレス戦にフル出場したが、チームは敗退。FAカップはここからスタートするものの、出場機会の激減は深刻だ。このままだと冬の移籍も取りざたされそうだが、間もなく33歳になるベテラン選手がW杯半年前に新たな環境に赴くリスクは高い。リヴァプールに居続けて、現状打開の糸口を探っていくことになりそうだ。
ただ、遠藤にとって力強い材料と言えるのは、2018年のロシア大会、2022年のカタール大会と2度のW杯を経験していること。大会前に照準を合わせてトップフォームに引き上げていくことの重要性を身を持って体感している。カタールW杯の時には当時在籍していたシュツットガルトで脳震盪を起こし、大会出場が危ぶまれながらも、何とか間に合わせて乗り切った経験もある。
「絶対みんなそこを心配してくれますけど、個人的にはあまり気にしていないんですよね。試合に出たら出たで『疲れていてコンディション懸念』となるし、出ていなかったら出ていないで『コンディション懸念』ということになる。自分は今の状態でもW杯で高いパフォーマンスを発揮できる自信がある。周りはいろんなことを言うとは思いますけど、大事なのは最後、W杯で結果を残すか残さないか。逆に言うと、試合にそんなに出ていない分、1試合に対してのモチベーションは個人的にはすごく高い。それを発揮していくだけですね」と本人は冷静に前だけを見据えているのだ。
とはいえ、少しでもリヴァプールでの状況が改善され、前向きな方向に進んでくれれば理想的。ボリビア戦を一つの起爆剤にしてほしいところだ。ガーナ戦に出場しなかった小川航基、鎌田大地、板倉滉らとともにピッチに立つと見られるが、彼らとともに相手を圧倒するような強さを見せつけ、遠藤自身が掲げた「W杯優勝」に近づけるように仕向けるべき。今こそ、背番号6の真価を示す時だ。
取材・文=元川悦子
【ゴール動画】南野拓実&堂安律のゴールでガーナを下す
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