第468話 世界で拡大する生成AI市場 日本企業のAI活用いまだ少なく

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:今日は前回に引き続き、生成AIの話をしましょう。今年6月、米国のソフトウェア企業であるオラクルが年間300億ドル規模の大型クラウド契約を締結したことを公表し、大きな話題となりました。これは日本円では約4兆3300億円になります。

T:オラクルと言えばデータベースソフトで有名ですが、クラウド事業も行っていたのですか。契約の規模が大きすぎて想像がつきません。

神様:クラウド企業としてはアマゾンやグーグル、マイクロソフトといった巨大テック企業から後れを取っている印象がありますが、最近はChatGPTを開発したオープンAIやソフトバンクグループとの合弁事業である「スターゲート」でAIに力を入れており、AIを中心としたクラウドインフラ企業に変化しつつあります。今回の契約もAIモデル訓練用の大規模クラウドインフラです。オラクルの2025年8月末の受注残高は前年同期比359%増の4,550億ドルとなりました。今後の動向に目が離せません。

T:生成AIをはじめとするAIの今後の力強いニーズが感じ取れる話題だと思います。

神様:生成AIは膨大な計算を必要とするため、クラウドサービスの利用が欠かせません。日本でもクラウド活用は徐々に浸透しています。政府はデジタル庁を中心に政府共通のクラウドサービスの利用環境である「ガバメントクラウド」を定め、政府や自治体のサービスのクラウド化を推し進めています。ガバメントクラウドの対象クラウドサービスは5つあるのですが、ご存知ですか?

T:聞いたことがあります。米アマゾンのAmazon Web Services(AWS)、グーグルのGoogle Cloud、マイクロソフトのMicrosoft Azureだったと思いますが、あと2つは何でしょうか?

神様:一つはオラクルのOracle Cloud Infrastructureです。

T:オラクルも日本のガバメントクラウドに選定されているのですね。知りませんでした。

神様:もう一つは、さくらインターネットのさくらのクラウドです。ただし、2025年度末までに全ての要件を満たすこと、という条件つきです。

T:なるほど。ここは日本の企業にも頑張ってもらいたいところですね。日本発の生成AIにも期待が持てます。

神様:一方で、生成AIを活用する日本企業はまだまだ少ないのが現状です。総務省によれば、2025年の日本企業の生成AI利用状況について「積極的に活用する方針である」または「活用する領域を限定して利用する方針である」と回答した企業は合計で49.7%でした。これは米国、中国、ドイツと比較すると低い水準です。

T:生成AIは全て米国のサービスですから、積極的に導入することを躊躇する企業もあるでしょうね。仕方がないことなのかもしれませんが。

神様:生成AIの導入に際して「効果的な活用方法がわからない」という意見も多いようです。また、おっしゃる通り海外企業のクラウドサービス上で生成AIを使うことへの抵抗や、個人情報の予期せぬ流出、著作権などの知的財産権への不安もあるでしょう。

T:そのような懸念を払しょくするためにも、ガバメントクラウドのような環境整備は必要ですよね。何事も土台があってこその発展です。

神様:実際に生成AIを活用した企業からは「業務効率が向上した」という意見も多く聞かれます。今後は導入前と導入後のギャップを埋めるような生成AI導入や利用方法の支援に対しても大いに需要があると考えられます。

T:生成AIを使った各企業の課題解決や新たな価値創造ができることを示し、日本でもさまざまなAIサービスが提供されることに期待したいです。日本にとっても世界にとっても、まだこれから大いに伸びる業界です。積極的にチャレンジしていきたいところですね。

神様:総務省によれば、日本のAIシステム市場は2024年に1兆3,412億円だったものが、2029年には4兆1,873億円まで拡大する見込みです。これは25.57%の年平均成長率です。市場の拡大に伴い、導入支援のニーズも高まるでしょう。各企業には“商機”を掴んでほしいと思います。

(この項終わり。次回10/15掲載予定)

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