
先週の17日に開催された『マイナビ ネクストヒロインゴルフツアー』(以下、ネクヒロ)今季第9戦「Norton Next Generation Tournament」では、かつて日本タイトルを制した20歳が優勝争いをけん引した。
同ツアーは、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテスト合格を目指す25歳以下の女子ゴルファーが、実戦を通じて腕を磨く場で、今年は全17戦が行われる。先週の一日大会の会場は、日本屈指の難関として知られる富士桜カントリー俱楽部(山梨県)。まだ富士山がはっきりと望めた夕暮れ時、首位に1打ビハインドの4アンダーでホールアウトした飯島早織は、逆転優勝、さらにはプレーオフ進出の可能性などを考えながら、後続をプレーする最終組の動向を見守っていた。
結果的にスコアが動くことはなく、飯島は2位に終わったが、その表情は晴れやかだった。もちろん「優勝したい」と思いはあるが、「(今年のプロ)テストが始まる前からずっと調子が良くないなか、ラフがすごく長くて硬い難しいセッティングで4アンダーを出せたというのは、すごくうれしい」と話した。
2023年には「日本女子アマ選手権」で優勝。日本ゴルフ協会(JGA)が選出するナショナルチームでも活躍するなど、アマチュア時代から注目を集める選手のひとりだった。しかし、日本女子アマ覇者の権利で最終から出場できた同年のプロテストは合格まで5打及ばず涙をのんだ。
さらに、翌24年も最終で1打足らず不合格に。3回目の受験になった今年は、台風の影響で54ホールに短縮された第2次予選A地区(2~5日、茨城・静ヒルズCC)で、やはり1打及ばず敗退した。
不調の原因として、「“パターイップス”じゃないですけど…」というグリーン上の問題を明かす。「試合に出ても(手が)震えて打てないという状態がずっと続いてました。テストでもそれが消えることなく、ショートパットがずっと怖くて…」。前年の最終テスト出場者として2次から挑んだが、悩みを解消できないまま、今年の合格はかなわなかった。
それだけに、17日のラウンドは飯島にとって優勝以上に価値があるものとも言えた。
「今までは“もう自分はだめだ”と思っていたんですけど、(パターが)入らず悪くなっていく…ではなくて、入ればどんどん変わっていけると、言い聞かせています。『やっていることは間違ってないよ』って、自分をほめてあげていたら、自信というか前向きな気持ちで試合に臨めました」
この変化には、もうひとつの前段として、大会前週に行われていた「ソニー 日本女子プロ選手権」(11~14日)で得た“イメージ”が欠かせない。飯島は現在、同大会の会場になった茨城県の大洗ゴルフ倶楽部でキャディの仕事をしながら、テストに備える生活をしている。その縁もあり、このメジャー大会にも目土のボランティアとして参加。業務以外の時間は、ラウンドを見ながら過ごしていた。
「ラフも長いし硬いし、グリーンは速い。そういう難しいセッティングのなか、(出場選手たちが)どう組み立てているのかを見ていました。その姿と重ね合わせながらできました」
特にゴルフのプレースタイルでも参考にし、「憧れの選手」と話すツアー通算5勝の青木瀬令奈が戦う姿を目に焼き付けた。「ウッドを多用してもアプローチやパターがずば抜けてうまいから、他の選手と距離の差があってもトップ10(同大会は5位)に入ってくる。マネジメントで自分の力を発揮できるのはすごい」。自分の特性を最大に生かすゴルフだ。
ネクヒロ開催時の富士桜は、男子ツアー「ロピア フジサンケイクラシック」開催から2週後で、ラフの調整などもほとんどその時と変わらない状況だった。難度も増すコースだったが、「自分ができることを頑張った結果。4アンダーが限界だったかな」と、手応えを感じ取ることができた。
エリート選手が乗り越えようとしている、困難と挫折。今年、アマチュア資格も放棄し、“プロ”としてゴルフに向き合う決断も下した。今年から参戦しているネクヒロでは今季9試合に出場。先週の2位が最高位だが、すでに5度のトップ10入りも果たしている。「(優勝できるよう)頑張ります。そうなれるように」。来年のプロテスト合格を目指し、再び一歩ずつ歩んでいく。(文・間宮輝憲)