
<スタンダード・ポートランドクラシック 最終日◇17日◇コロンビア・エッジウォーターCC(オレゴン州)◇6497ヤード・パー72>
18番で4メートルのバーディパットを打つとき、岩井明愛は少しだけ安どしていた。「リーダーボードを見て(3打差で)勝てそうだなと思った。逆に緊張がなくなっていいパットが打てた」。ウイニングパットを決めてガッツポーズ。ツアー初優勝を果たした。
2打リードで迎えた最終日は、双子の妹・千怜が猛追してきた。イーグル・バーディ・イーグルの3連続などで、一時は1打差まで詰め寄られた。「全然気づかなかったです。周りを気にしている余裕もなかったので、とりあえず一打一打に集中していました」。「64」をマークした千怜に対し、明愛も6バーディ・ボギーなしの圧巻「66」。「きょうの岩井明愛には勝てないと思います(笑)」。後続に4打差をつける圧勝だった。
千怜と一緒に昨年の米最終予選会へ挑戦。ともに突破し、ルーキーとして同時に歩み始めた。明愛は2月「ホンダLPGAタイランド」、4月「JMイーグル・LA選手権」では優勝争いの末に2位。千怜は5月「リビエラマヤオープン」で先にツアー初優勝を遂げた。
2021年6月に日本のプロテストに合格したふたりだが、優勝はいつも、妹が先だった。下部ステップ・アップ・ツアーでは同年9月に千怜が「カストロールレディース」で勝利し、次戦の「山陽新聞レディースカップ」で明愛が勝利。レギュラーツアーでも千怜が22年8月「NEC軽井沢72ゴルフ」で初優勝を果たして、先手を取られた。
今年から主戦場を移した米女子ツアーでも、千怜が先に“1勝”の肩書きを手にした。焦りは「ありましたね」と、心情を吐露する。「今年は勝てそうで勝てない試合があって、本当に悔しくて。千怜が優勝して『(自分は)勝てるのかな』っていう不安もあった。きょうは目先のことを考えてもどうしようもないので、自分に打ち勝つ気持ちで頑張りました。勝てるまでは信じていなかったけど、自分のやるべきことをやれば大丈夫だとは思っていました」。
明愛はかねて、千怜のことを「一番近い存在の仲間」と表現する。この日、明愛を追いかけた千怜も「いや~、うれしかったです。本当に良かったです。勝って欲しいというより、勝つのは分かっていた。頑張っているのも見てきたので、“やってくれたな”という感じ。ホッとしています」と心から祝福した。
米ツアーでの姉妹優勝は4組目、双子としては史上初の快挙となった。岩井姉妹の強さを千怜は、「お互いが上位に行ったら『負けてらんないな』という気持ちになる。どちらかが勝つとうれしいけど、悔しい思いも少しある。うまく刺激し合っているところが一番いいかな」と話す。とはいえ、今回の勝利については「きょうはうれしいです」と手放しで喜んだ。
明愛の次の目標とする「メジャー優勝」は来年に持ち越されたが、残りシーズンで目指すのは「千怜と一緒に何勝か」すること。「いつも心のどこかに千怜がいる。自分ももちろん頑張りたいですけど、2人でいきたい」。岩井ツインズの米ツアーロードは始まったばかりだ。