
国内女子ツアーは3月から2025年シーズンがはじまり、ルーキーからベテランまで、さまざまな選手が活躍しており、今季も見どころ満載だ。実際にロープ内で戦う選手たちにドライバーショットからパッティングまで、うまいと思う選手を挙げてもらった。プロ21年目の39歳でツアー通算6勝を挙げている藤田さいきに聞いた。
【ドライバー部門】
岩井明愛&千怜
ドライバー部門は「岩井姉妹の2人は上手だと思います」と岩井ツインズとして知られる明愛と千怜の2人を挙げた。
2人ともドライバーの平均飛距離は250ヤードを越える飛ばし屋だが、その理由は次のように話す。「単純にいいスイングで上手いなと思います。飛ぶし、曲がらないし。直ドラもあれだけ打てるのは、上手な証拠です。コンタクトがうまくないと直ドラは打てないですから。(スイング軌道が)上からでも下からでもないので」
岩井姉妹の代名詞にもなっているフェアウェイからドライバーを打つ、いわゆる直ドラ。藤田は昨年明愛と同組で回った時に、感化されて直ドラを試みたという。「普段やらないのに見ていたらいけるんじゃないかと思って。そこそこ打てて、バーディを取れました」と胸を張ったが、躊躇なくやれる岩井姉妹の上手さを改めて感じたという。
【フェアウェイウッド&ユーティリティ部門】
青木瀬令奈
フェアウェイウッド&ユーティリティ部門で真っ先に名前が挙がったのは、青木瀬令奈。「やばいっす。ウェッジかっていうぐらい精度が高いです」。青木は身長153センチと小柄で、ドライビングディスタンスは220ヤード前後。ツアーでは“飛ばない”選手に分類されるが通算5勝を挙げ、2015年からシード権を保持し続けている実力者だ。
フェアウェイウッドを持っても「右からの風に対してカットボールで(グリーン上で)止めたり、飛距離を抑えたいときは薄めに打ったり、いろいろやるんです。アイアンじゃなくてフェアウェイウッドでやるから、すごい」。ただ真っすぐ打つだけでなく、テクニックを駆使して距離感をコントロールしている点を評価した。
【アイアン部門】
小祝さくら
アイアン部門は「みんなうまいんですよね」と上位で戦う選手は、レベルが高く甲乙つけがたいというが悩んだ末に出てきたのは、「小祝さくらちゃん、ですね」。
小祝のうまさはどこにあるのか。「クラブの入り方がいい。ボールに対してのコンタクトがうまい。そのためボールコントロールも上手です。他の選手と少し音が違いますね。ボールだけクリーンにヒットしている感じです」。スイングがいいからショットの精度も高いということだ。
【ショートゲーム部門】
申ジエ
ショートゲーム部門を聞くと真っ先に名前が出たのは今年5月の国内メジャー「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」で、プレーオフを戦った相手、申ジエだ。
藤田は長年同じ土俵で戦う申ジエのうまさについて次のように話す。「彼女のプレーを見ていると、打つ前の素振りとか動きで打とうとする球筋のイメージを出していますが、見ているこっちまでそのイメージが伝わってきます。実際に打つと、そのイメージ通りのボールを打ちます。(元)世界1位はさすがです」。
ちなみに、藤田も申ジエを参考にした時期もあったようですが、「私がやるとズレるんです。定まっていない。やってみたけど、ダメでした」と簡単にはいかないようだ。
【バンカー部門】
佐久間朱莉
続いてはバンカー部門。「佐久間朱莉ちゃんですね。一緒に回った時に音がキレイで、すごくうまかったです」。
今年4月に行われた「KTT杯バンテリンレディス」で初優勝を遂げた佐久間は、今季すでに3勝を挙げている。昨季は未勝利ながら14度もトップ10入りと順調にステップアップ。いつ優勝してもおかしくないといわれていた22歳が、悲願の優勝をつかみ今季の年間女王争いに名乗りを上げている。
バンカーショットがうまい選手とそうでない選手の違いを藤田に聞いた。「簡単にいうとバンカーから距離感をうまく出せる選手ですね。クラブの入れ方や砂を取る量などで距離は変わります。朱莉ちゃんもそうだと思いますが、自分の中でその基準を持っているんだと思います。もちろん練習量の差なのでしょうが、それを試合でも正確に出来るからうまいんだと思います」。ボールを打ってきた数が、砂の上からでも正確な距離感が出せるということだろう。
【パッティング部門】
青木瀬令奈
最後はパッティング部門。こちらも即答で「青木瀬令奈でしょう。青木さんのパッティングはおかしいですよ」と笑いながら話す。青木プロのうまさは、「狙ったところに打てる」ところ。基本的な部分ではあるがプロの中でも群を抜いているという。
また技術的な部分だけでないとも。2人でペアを組んでツアー外競技に出たことがあるそうだ。「ツアー競技ではないのに、朝からパターを3本ぐらい持って現れました」。青木はヘッド形状やロフト違いなど何本もパターを持っている。
スタート前に湿度とか芝質を調べて、「じゃあ、これでいいか」と1本を決めた。「なにそれ、すげぇってなりました。よくわからないですよ、天才は」と藤田は笑う。1ラウンド当たりの平均パット数は4シーズン連続1位という青木のこだわりはプロ仲間も舌を巻くものだった。
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