第446話 国を守る「能動的サイバー防御」とは? サイバーセキュリティに注目

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:さて現在、衆参両院で第217回通常国会が開会中です。今国会の注目の一つは「能動的サイバー防御」でしょう。

T:最近報道などでよく聞く言葉ですが、能動的サイバー防御とはどのような内容なのでしょうか?

神様:昨今、サイバー攻撃による政府や企業の内部システムからの情報窃取が大きな問題となっているのはご存知ですよね?

T:情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威」2025年版では、ランサム攻撃による被害、機密情報等を狙った標的型攻撃などが10年連続で選出されています。企業にとって重要情報が盗まれるのは大きな脅威ですね。

神様:被害を未然に防ぐため、攻撃元のサーバなどに対するアクセスや攻撃の無害化措置の実施などを可能とするのが「能動的サイバー防御」です。特に近年、国や重要インフラへのサイバー攻撃は、日本の治安、安全保障や危機管理にとって脅威となっています。2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略において、「サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる」、「武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大を防止するために能動的サイバー防御を導入する」などの方針が掲げられました。

T:そして今、その法整備について国会で議論されているということですね。

神様:衆議院ではすでに可決されましたが「通信の秘密」が十分に尊重されるよう修正も行われました。通信の秘密の尊重以外にも、アクセス・無害化措置において警察や自衛隊がどのように連携していくのか、国家によるサイバー攻撃をはじめとした海外からの攻撃に対してどのように対応するのか、課題は数多くあります。

T:昨年はランサムウェアによる攻撃など大きなサイバー攻撃が相次いだ年であった印象があります。今後もサイバー攻撃は増えていくのでしょうね。

神様:警察庁が検知した不審なアクセス件数は、直近5年間で倍以上に増えています。それに応じてサイバー犯罪の検挙数も伸ばしていますが、不審なアクセス件数の伸びが鈍化する傾向は見られません。ちなみに、昨年のランサムウェアの被害報告件数は222件と、非常に高い水準です。

T:222件もあったのですね。報道されている事件は氷山の一角ですね。

神様:個人への攻撃においても同様です。送信者を詐称したメールやSMSを送りつけ、偽のホームページなどにアクセスさせてクレジットカード番号などの重要な情報を盗み取るフィッシングの報告件数も大きく増加し、昨年は171万8,036件でした。インターネットバンキングに係る不正送金事犯の被害総額は約86億9,000万円。どちらも近年急激に増加しています。

T:国家や重要インフラについては能動的サイバー防御が重要ですが、私たちに身近なサイバー防御もますます重要になってきていると言えますね。

神様:組織も個人も、能動的な対策だけではなく、受動的な対策も強化していく必要があります。公共団体や企業がサイバーセキュリティツールを導入することはとても大事なことです。また、一人ひとりがサイバーセキュリティへの意識を高めることも重要です。多くのサイバー攻撃は、日ごろのセキュリティ対策で防ぐことができます。脅威への対策を放置しないことが大事です。

T:なるほど。その通りですね。

神様:日本のサイバーセキュリティ市場は今後大きく拡大する見込みです。グローバルインフォメーションの調査によると、日本のサイバーセキュリティ市場は2025年に22.7億ドルとなり、2030年には39.8億ドルと、年率11.9%の成長が予測されています。多くの公共団体や企業が、サイバーセキュリティを怠れば、情報システムの停止による損失、顧客情報の漏洩による企業や組織のブランドイメージの失墜など、重大なリスクが生じる懸念があることを理解しています。今後のさらなるセキュリティ強化が求められています。

T:サイバーセキュリティはまさに企業の“守りの要”。セキュリティ関連企業にとっては大きなチャンスですね。

(この項終わり。次回5/7掲載予定)

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