今季の稼ぎは90億円超!? “最強王者”シェフラーの新境地【舩越園子コラム】

PGAツアーのプレーオフ最終戦「ツアー選手権」は、松山英樹が年間王者のタイトルと2500万ドル(約36億円)のビッグボーナスを獲得できるかどうかに、日本のファンの注目が集まっていた。
しかし、松山は今一つスコアを伸ばしきれず、トータル16アンダー・9位タイで終了。見事な勝利を挙げ、年間王者に輝いたのは、28歳の米国人選手、スコッティ・シェフラーだった。

振り返れば、2年前の「マスターズ」最終日の朝、「僕には、オーガスタで優勝争いする準備がまだできていない」と言って、愛妻メレディスの胸で泣きじゃくったシェフラーは初々しい若者だった。

しかし、あれから2年半ほどを経た今大会のシェフラーは、勝って年間王者になるための準備が十分すぎるほどにできていた。

シェフラーがフェデックスカップ・ランキング1位でツアー選手権を迎えたのは今年が3度目。2022年大会では2位に6打差を付けて最終日を迎えながら、ローリー・マキロイ(北アイルランド)に逆転負けを喫し、2023年大会ではビクトル・ホブラン(ノルウェー)に勝利を持っていかれた。

だが、今年のシェフラーは初日から首位を守り抜き、2位のコリン・モリカワ(米国)を4打も引き離すトータル30アンダーで、自身初の完全優勝を達成し、自身初の年間王者に輝いた。

とはいえ、最終日には波乱もあった。2位に5打差でティオフしたものの、7番でボギーを叩くと、短いパー4の8番ではグリーン際のバンカーからの2打目をシャンクさせて連続ボギー。暗雲が立ち込めた。

「でも、まだ僕は2打もリードしているんだと自分に言い聞かせ、集中力を切らさないように踏ん張った」

その言葉通り、続く9番(パー3)ではピン1.5メートルにピタリと付けてバーディを奪い返すと、10番、11番とバーディを重ねた。14番(パー5)では2打目でピン5メートルを捉えてイーグル奪取。2位との差を4打に広げ、首位の座を強固にした。

最終18番(パー5)は手堅くレイアップして3打目でグリーンを捉えると、80センチのウイニングパットを沈め、相棒キャディのテッド・スコットと勝利のハグを交わした。

「今週はチャレンジングな1週間だった。きょうは、ほぼすべてがメンタルの戦いだった」

愛妻メレディスの姿を目で探し、アイ・コンタクトを取った瞬間、こわばったままだったシェフラーの頬がようやく緩んだ。

今年6月に生まれたばかりの長男ベネットは、シェフラーに抱き上げられた途端、どうしてだか激しく泣き出した。その場面を目にしたとき、マスターズ最終日の朝に愛妻の胸で泣いた2年半前のシェフラーが思い出され、弱々しかった彼の大きな成長ぶりをあらためて痛感させられた。

今季7勝。シェフラーの大躍進の始まりは、パターを変更して勝利した3月の「アーノルド・パーマー招待」だった。ドライバーは飛んで曲がらず、小技の上手さは「マジック級」と評されてきた彼の昨年までの唯一の弱点はパットだったが、マレットパターに握り替えてからは、弱点が最大の武器に変わった。

ザ・プレーヤーズ選手権、マスターズ、RBCヘリテージ、メモリアル・トーナメント、トラベラーズ選手権を次々に制し、パリ五輪では金メダルを獲得。

「全米プロ」2日目の朝には、交通整理の警官の指示に従わなかったとみなされ、その場で手錠をかけられて連行される逮捕劇があった。わずか2時間ほどで釈放された後は、ショックをモノともせず、好プレーを披露して8位タイ。あのときもシェフラーのメンタルの強さに驚かされた。

世界ランキング1位の座をキープし続けているシェフラー。誰の目から見てもすでに今季のベストプレーヤーだったが、年間王者に輝いたことでそれを形にして実証したと言っていい。

「まるで、この1年が僕の生涯だったような感じがする」

今季の獲得賞金総額はツアー史上最高となる2922万8357ドル(約42億円)。年間王者のボーナス約36億円とレギュラーシーズン終了時に手に入れたコムキャスト・ビジネス・トップ10の1位のボーナス約11億7000万円を合わせると、今年、シェフラーが手に入れたお金はなんと“90億円”超だ。

どこからどう見ても、「王者シェフラー」である。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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