
<三井住友VISA太平洋マスターズ 事前情報◇7日◇太平洋クラブ 御殿場コース(静岡県)◇7262ヤード・パー70>
男女ツアーに“AI旋風”が吹きつつある。前週の国内男子ツアー「マイナビABCチャンピオンシップ」では池田勇太や池村寛世など7名が、2週前の国内女子ツアー「樋口久子 三菱電機レディス」では西郷真央、青木瀬令奈、木村彩子など6名が、オデッセイから11月3日に発売されたばかりのパター『Ai-ONE』シリーズを投入した。今週も両ツアーでさらに使用者が増えそうな気配もある。
このパターの特徴はフェースにある。約6年の開発期間を経て、AIが設計したフェース裏面の独特な形状が、芯を外したときにも、距離感に安定感をもたらす。通常のパターでは芯を1センチ外せば、ボールスピードは約20%ロスする。しかし、『Ai-ONE』では約5%。つまり、10メートルの距離で1センチ芯を外すと、約2メートルショートしていたものが、『Ai-ONE』では約50センチしか差が出ない。3パットのミスを減らしてくれるわけだ。
現在、フェースインサートが樹脂の『Ai-ONE』には5機種、フェースがチタンの『Ai-ONE-MILLED』は8機種のラインナップが発表されている。今週、河本力が持っていたのはそのどれでもない、2ボールでショートスラントネックの『Ai-ONE』だった。
これはキャロウェイのツアー担当が、パターに悩む河本に「提案」として今週渡したもの。日本には現在5本しかなく、男子ツアーには河本が持つ1本と合わせて3本、女子ツアーには2本が存在する。
河本はもともとエースパターとして、マレット型の『ホワイト・ホット OG ROSSIE S』を愛用しており、「パターは迷走していろんな旅に出ていたけど、最近これに戻ってきた(笑)」と、今週を含め秋のビッグトーナメントは、この2ボールではなくエースで戦う予定だ。
それでも、「長い距離ってなかなか芯でヒットするのが難しいし、AIは初速が安定するのですごく助けられる。いいなーとは思います」と、エースにない良さも感じている。ロングパットは振り幅が大きくなるため、ツアープロでも毎回芯でボールを捉えるのは難しいのだ。また、マレット型のイメージが強い河本だが、2ボールは学生時代に使っていた時期があり、「やさしいというか、真っすぐ打ちやすい」と、白い円が2つ並んだ形には、良い印象を持っている。
今週も何人か投入する選手が増えそうな『Ai-ONE』シリーズ。キャロウェイのアマチュア&ツアー担当の小嶋豊彦氏は、「芯を外したときの距離の違いは、プロの方がより分かる。キャディも普段からそのプロを見ていれば差が分かるし、使わせたくなる。だから増えているのではないでしょうか」と予測する。『Ai-ONE』を使用した選手が勝ったりすれば、一般ゴルファーの人気にも一気に火がつきそうだ。(文・下村耕平)