11月3日の米中間選挙の激戦州の一つ南部ジョージア。上院選で幅広い支持を集めて選挙戦を優位に進め、民主党の将来を担う存在と目されるのが39歳の現職ジョン・オソフ議員だ。共和党は不人気のトランプ大統領に寄り添う上院候補が劣勢。一方、知事選は両党候補の接戦となっている。
◇黒人票固める
選挙戦最終盤の10月29日夕、アトランタ市内の大学にはオソフ氏を一目見ようと黒人の若者が集まった。「私たちがやるべきことを全てやれば、米国の歴史の流れを変えられる」。オソフ氏がこう投票を呼び掛けると、熱狂的な歓声が会場内にこだました。
大学生ノエル・ウィルソンさん(18)は「素晴らしい演説だった。若者と心を通わせてくれている」と声を弾ませた。マイルズ・ビリングスリーさん(19)も「彼は多くの黒人有権者の信頼を得ている。いい仕事をしている」と絶賛した。
ジョージア州は2000年代以降、共和党が優勢だったが、最近の大統領選ではトランプ氏と民主党のバイデン前大統領が交互に勝利するなど接戦州と見なされている。
背景の一つが民主党支持者が多い黒人の人口増だ。エモリー大のアンドラ・ギレスピー准教授は、黒人人口が全米有数の同州では「黒人有権者の投票率が非常に重要になる」と説明。集会には黒人の間で人気が高いハリス前副大統領が応援に駆け付け、オソフ氏陣営は票固めに余念がない。
◇動画拡散で評判に
オソフ氏が全米で一躍注目を集めたのは一本の動画だ。「トランプ氏は大統領の仕事をしたくない。ナタリーと旅行したがっている」。トランプ氏と側近女性ナタリー・ハープ氏との親密な関係をやゆするオソフ氏の演説が今夏ネットで拡散。トランプ氏を真っ向から挑発する姿勢が政権に批判的な人々の受け皿となった。
オソフ氏は調査報道の会社経営を経て、21年に上院選で初当選。端正な容姿に巧みな演説で知られる。本人は「大統領選出馬への関心はゼロだ」と繰り返すが、激戦州で再選されれば、28年大統領選の有力候補となる可能性がある。
オソフ氏の強みは、党派を超えた地元有権者への配慮だ。民主党系選挙専門家アンドルー・ヒートン氏は、「超党派で働く姿勢を好む穏健な共和党員の支持も得ている」と指摘する。
地元紙によれば、8月には共和党の2市長が異例のオソフ氏支持を表明した。バルドスタ市のマセソン市長は、交通機関整備の資金確保に協力してくれたオソフ氏の手腕を高く評価している。
◇イラン攻撃に反対
上院選は当初、接戦が予想されていたが、政治専門サイトの最新の世論調査平均値では、共和党のマイク・コリンズ下院議員は、オソフ氏に約8ポイント差をつけられている。燃料価格の高騰などを背景にトランプ氏の支持率が最低水準となる中、同氏支持を鮮明にしてきたコリンズ氏は苦戦する。
一方、州知事選を争う共和党の実業家リック・ジャクソン氏は、トランプ氏と付かず離れずの位置を維持し、民主党のケイシャ・ランス・ボトムズ前アトランタ市長と接戦を繰り広げている。
アトランタ市内で期日前投票した医療関係に従事する女性(56)は、公約を破ってイラン攻撃に踏み切ったトランプ氏への支持をやめた。「知事はジャクソン氏に入れたが、上院はバランスを取るためオソフ氏を選んだ」と明かした。
〔写真説明〕演説するオソフ米上院議員=10月29日、南部ジョージア州アトランタ
〔写真説明〕オソフ米上院議員の集会に参加する黒人学生ら=10月29日、南部ジョージア州アトランタ
〔写真説明〕演説するハリス前米副大統領=10月29日、南部ジョージア州アトランタ