再犯防止に効果と限界=ストーカーにGPS導入の韓国―行為抑制に課題も

”滝のように降る雨”増加傾向に

 【ソウル時事】深刻なストーカー犯罪を防ぐため、韓国は全地球測位システム(GPS)を利用した加害者監視を導入した。運用開始から3年が経過し再犯防止に効果を上げる一方、制度の限界も浮き彫りとなっている。
 ◇対象犯罪を拡大
 韓国では2008年、再犯の恐れがある性犯罪者に対し、GPS機能の付いた追跡装置を着用させる制度を開始。適用範囲はその後、殺人などにも広がり、23年にはストーカー犯罪も対象となった。今年6月には、加害者の接近を被害者がリアルタイムで確認できる仕組みも導入された。
 装置は足首に取り付け、容易に外せない仕様だ。記者が試すと若干の重量感を感じたが、締め付けられるような感覚はない。法務省の担当者は「慣れれば生活に大きな不便はない」と強調。「装着したままシャワーや入浴も可能だ」と話す。
 ◇24時間監視
 ソウルにある法務省傘下の「位置追跡中央管制センター」を訪れると、大型モニターが設置された部屋で職員が画面に目を光らせていた。全国で5000人以上いる対象者を、ソウルと中部・大田の管制センターで24時間体制で監視している。
 装置の破損や被害者への接近があれば、保護観察官に対応を要請。システムが異変を察知した際に出る「警報」は1日平均1万9000件に上り、そのうち約300件で保護観察官が出動している。
 法務省によると、制度導入後の性犯罪の再犯率は、導入前の9分の1程度に減少。ストーカー行為により装着を義務付けられた者による被害者への報復犯罪はこれまでに発生していないという。
 ◇改善の余地
 ただ、制度の限界を露呈させる事件も起きた。10月、ソウル近郊・仁川の商業施設で、追跡装置を付けた男が客を刃物で切りつける事件が発生。男は元妻の殺害を試み服役した過去があり、事件前には保護観察官と面会もしていた。男は社会への不満を訴えるため犯行に及んだとされる。
 韓国刑事・法務政策研究院の※(※袤の矛が非)相均研究委員は「電子監督制度は位置情報だけを把握するものであり、行為までは監視できない」と説明する。「社会への不満と鬱憤(うっぷん)を抱え、捕まっても構わないと考える人」を抑止するのは難しいと指摘した。
 装着対象者の増加に伴い、保護観察官1人当たりが担当する人数は約20人に上る。※氏は、米国など同様の制度を導入している他国と比べて「非常に多い」として、「位置を細かく把握しながら、対象者の心理や生活を複合的に評価する体制を築くべきだ」と改善の必要性を語った。 
〔写真説明〕足首に装着された韓国のGPS装置=9月8日、ソウル
〔写真説明〕韓国・ソウルにある「位置追跡中央管制センター」の様子(提供元による画像処理があります)(韓国法務省提供・時事)
〔写真説明〕取材に応じる韓国刑事・法務研究院の※(袤の矛が非)相均研究委員=10月27日、ソウル