【ワシントン時事】トランプ米政権は9日、国際刑事裁判所(ICC)本体への制裁に踏み切った。これに対し、日本や欧州主要国の外相は即座に「国際秩序を守る」とする共同声明を発表した。ICCを「主権への脅威」と断じて「解体」も辞さない構えの米国との間で、深刻な対立を招く恐れもある。
「自国防衛で米軍に頼っている同盟国が、ICCに歯止めをかけることを期待する」。ルビオ米国務長官は9日、声明でこう述べた。日本や北大西洋条約機構(NATO)加盟国などを念頭に、制裁に協力するように要請した形だ。トランプ大統領も9月、国連総会の一般討論演説で、ICC加盟国に「即時の脱退」を求めており、今後も働き掛けを強める可能性がある。
制裁の一部には180日の猶予期間が設定された。制裁解除の条件は明示されていないが、トランプ氏は「ICCが米国人を捜査、訴追することを決して認めない」と主張してきた。ただ、「独立性と公平性」を旨とする国際裁判所がこうした要求を受け入れる見通しはない。制裁が本格化すれば、ICCは存亡の危機にひんし、支持を表明した日欧も米国との関係上、難しい立場に置かれかねない。
米国の強硬姿勢の背景には、ICCに加盟していない米国の兵士が戦争犯罪などで訴追されることへの懸念がある。クリントン大統領(当時)が2000年、ICC設立を定めた条約に署名したものの、批准プロセスを見送ったのはそのためだ。
ルビオ氏も「ICCには米国民への管轄権はないという点で、両党(共和党、民主党)は一致している」と強調する。これに加えて、トランプ政権は国際協調よりも自国優先を鮮明にしている事情がある。ICCを、米国の主権を脅かす「グローバリスト」の象徴と見なし、攻撃してきた。
さらに、11月3日の中間選挙を前に、対イラン軍事作戦に伴うガソリン価格高騰のあおりを受けて与党・共和党が苦戦し、トランプ氏本人の支持率が低下していることも影響している。国際機関から米国を守るというレトリックで、トランプ氏の支持基盤に訴える狙いもあるとみられている。
〔写真説明〕トランプ米大統領=9日、ニューヨーク州シラキュース(AFP時事)