【ニューデリー時事】インドで有権者が不正に選挙人名簿から抹消されていた疑惑が浮上し、選挙管理委員会トップの辞任を求めるデモが各地で相次いでいる。名簿から削除された人数は1億3000万人超と報じられ、「世界最大の民主主義国」の根幹を支える選挙の信頼性が揺らいでいる。
首都ニューデリーでは10日、若者を中心とするネット発の政治運動「ゴキブリ人民党(CJP)」が大規模デモを呼び掛け。中心部に多数の警官が配置され、ネット規制を含む厳戒態勢が敷かれた。地元報道によると、CJP創設者のディプケ氏はニューデリーに到着した飛行機内で仲間とともに当局に身柄を拘束された。
CJPはX(旧ツイッター)で、「独裁者は自らに不正を問い、沈黙を拒む若者に恐怖を感じている」と拘束を批判した。
問題の中心にあるのは、選管が昨年から複数の州議会選挙に先立ち実施している「特別集中改訂(SIR)」と呼ばれる選挙人名簿の確認・更新手続きだ。
SIRの目的は、死者や重複した有権者を名簿から削除し、資格のない人の投票を防ぐためとされている。モディ首相率いる与党インド人民党(BJP)は、隣国バングラデシュ出身者ら不法移民が登録されていると訴えてきた。
一方で、多数派であるヒンズー教徒を支持基盤とするBJPが、自らに都合のいいように少数派のイスラム教徒らの投票権を意図的に奪っているとの批判がくすぶってきた。
潮目が変わったのは、地元紙インディアン・エクスプレスの今年9月下旬の調査報道だ。同紙は名簿からの有権者抹消を含む重要な決定が、ギャネシュ・クマール選管委員長の一存で決まった可能性が高いと報じた。
決定には法律上、委員長を含む委員3人の全会一致か多数決が必要とされる。しかし、過去10カ月間に少なくとも14回の異議が他の委員2人からクマール氏に申し立てられたにもかかわらず、手続きが進められたという。選管は不正を否定している。
9日には最大野党・国民会議派を軸とする野党連合幹部がムルムー大統領と面会。「票が盗まれ、民主主義の基盤が破壊されている」と訴える書面を手渡し、クマール氏の辞任やSIRの中止などを要求した。
〔写真説明〕10日、ニューデリーで選管委員長の解任を求めるデモに参加する政治運動「ゴキブリ人民党」支持者ら(EPA時事)