日本で20数年前より流通するカブ系の「中国製エンジン」。いまやカスタムシーンで欠かせない存在にもなっています。専門業者に聞くと、確かに当初は不良も多かったといいますが、製品だけでなくユーザーも進化しているようです。
20年以上前から中華エンジンを販売してきた業者に聞いた
ホンダ「スーパーカブ」のエンジンは同社製の様々なミニバイクに活用されてきました。そうしたなか、20数年前より日本で流通するようになったのが、このエンジンを模した中国製エンジンです。
俗に「中華エンジン」「中華カブ」と呼ばれるエンジンですが、その評価はユーザーごとまちまち。「安くていい」という声がある一方、「ホンダの公式エンジンはもちろん、日本のパーツメーカーのエンジンには到底及ばない」といった酷評も。しかしながら、経年とともに純正パーツが入手しづらいなか、こうした中国製の代替パーツがあるからこそカスタムを気軽に楽しめるのも、また事実です。
「中国製エンジンも、かつてとは比較できないほど進化している」
こう話すのは、ミニバイクに特化したカスタムパーツを数多く取り扱うメーカー・ミニモトの担当者です。20年以上、スーパーカブ系のエンジンを搭載したモンキー、ゴリラ、ダックス、シャリィといったいわゆるレジャーバイク系を中心としたパーツを幅広く販売してきました。
取り扱う商品点数は5000種以上とも言われ、ホンダの純正部品、日本のカスタムパーツメーカーの部品、台湾ほか諸外国のメーカーの部品、そして中国のメーカーの部品で構成されています。代表の小平幸永さんに聞きました。
「弊社が取り扱う製品全体の約4分の1が中国製パーツです。ホンダのモンキーをはじめとするミニバイク用のカスタムパーツのほか、純正部品を再現した外装部品、フェンダー類、燃料タンクを始め、バッテリーやタイヤといった消耗品についても中国製を扱っています。幅広い製品を比較的リーズナブルな価格でご提供できることが特長で、長年にわたる弊社のラインナップを支える重要なカテゴリーの一つとなっています」(小平さん)
こういった中国製パーツの供給を行う中で、いち早くミニモトが販売したのが、いわゆる「中華エンジン」と呼ばれる中国製エンジンでした。
「スーパーカブ系のホンダの横型エンジンは、今でも根強い人気があり、純正エンジンを修理・レストアしながら大切に乗り続けるお客さまが多くいらっしゃいます。一方、より高い馬力やトルクを求め、海外製の大排気量エンジンへ載せ替える方もいて、標準的な49ccに対して86cc、107cc、124ccなどボアアップして楽しまれている方もいます。
こういったカスタムを楽しむ方に対し、弊社では中国製のエンジンを20年以上前から販売してきました。
中国にはスーパーカブ系のような横型エンジンを製造するメーカーが複数あり、中には日本の大手バイクメーカーから技術提供を受けたり、提携していたりする実績を持つところもあります。弊社ではこういった比較的信頼性が高く、故障の少ないメーカーを中心に製品を選定し、販売させていただいています」(小平さん)
輸入当初に多かった中華エンジンのトラブル例
その“選定”に対しては、ミニモトが20年以上中国製エンジンと向き合ってきた経験が反映されているとのこと。ただ中国製エンジン輸入初期はトラブルが頻発し、フォローに奔走した時代もあったと言います。
「輸入を始めた初期の頃には中国製エンジンの焼き付き、ミッションギアの噛み込み、ギア欠け、キックバックによるギア破損といったトラブルが発生したこともありました。また、組立作業者によるボルト類のトルク管理不足や異物混入、一部部品の組み忘れなど、初歩的なミスと思われるトラブルもありました。
一方、高圧縮・高出力のエンジンに不慣れなお客様が、始動方法や扱い方によって故障させてしまうケースもあり、その度に弊社ではできる限りの対応を行ってきました。
中国製エンジンに対する不具合、ケアレスミスなどをメーカーへ継続的に指摘・フィードバックし、品質改善につなげてきました」(小平さん)
ミニモトでは、中国から入荷した後の製品の検品も念入りに行っていると言います。特にエンジン本体は20kg台のモデルが多く、中国国内から日本への海上輸送などの配送プロセスの中で、どうしても衝撃を受けたり破損したりするケースがあるからだそうです。
「現在弊社でラインナップしている中国製エンジンは約20種類ありますが、入荷したすべてのエンジンを開梱し、箱から取り出したうえで外観状態やオイル漏れの有無、付属部品の不足・破損、注文した仕様と相違がないかなどを一点ずつ確認しています。
海外製品にはどうしても製造・輸送上の一定リスクが伴うものですが、その不安要素をできる限り国内で取り除いてからお客さまへお届けしたいと考えています」(小平さん)
中華エンジンの返品率が「1000台に1台ほど」に飛躍した理由
では、今日の中国製エンジンの性能はどうなのでしょうか。輸入初期の頃にあったようなトラブルが現在は改善されているのかどうか気になります。
「現在、弊社が販売している中国製コンプリートエンジンの返品率はおよそ1000台に1台程度となりました。輸入を始めた20年以上前と比べて品質・耐久性ともに大きく向上していると感じています。
その背景には、メーカー側が長年にわたり各国で販売を続け、販売店やユーザーから寄せられる不具合情報を蓄積し、製品へフィードバックしてきた結果があると思っています」(小平さん)
また、「純正エンジンではない」ということへのユーザーへの周知をミニモトが徹底してサポートしたことも、著しく返品率が減った理由だと小平さんは自負しています。
「弊社が扱う中国製エンジンの多くは、純正49ccエンジンよりも高出力・高トルクな仕様が多いため、取り付け方法、エンジンオイル量、使用環境によってはトラブルにつながることがあります。
過去には、オイル量が多すぎたことでブリーザーからオイルが吹き出したり、クランクケース内圧が高まり、オイル漏れや不具合につながったりした例もありました。また、レースのようにエンジンへ大きな負荷をかける使用では、当然ながら故障のリスクも高まります。
こうした点について、弊社では、LINEやお問い合わせフォームなどを通じてできる限りサポートしています。
また近年では、YouTubeなどでエンジン載せ替えや取り扱い方法に関する情報が数多く公開されており、お客様自身が購入前に知識を得られるようになったことも、トラブル減少の一因だと考えています」(小平さん)
それでもやはり中国製エンジンに不安を拭いきれない人もいるかもしれません。改めて小平さんに聞くと、「適切な慣らし運転をする」「適正時期のエンジンオイル交換」「適切なクラッチケーブルを使う」「真夏のツーリングや長時間走行ではオイルクーラーなどの取り付けも視野に入れる」などの対策をすることで、耐久度はより増すとのことです。
「これらを守っていただき、1日に600kmのロングツーリングを楽しまれている方もいらっしゃいます。
ホンダのスーパーカブ系エンジンとの互換性を意識した中国製エンジンのメリットは、オイルシール・ベアリングなどの規格品を入手しやすいことです。一部の部品については予防的に交換される方もいらっしゃいます。あるいはスプロケットなどの歯数を変更させることで、加速寄り・高速寄りなど、お好みの走行特性にセッティングすることもできます。
ミニバイクはアイデア次第で楽しみ方が大きく広がります。もちろん、法令や安全基準を守ったうえで楽しんでいただくことが前提ですが、“いじって楽しい、走って楽しい”。そして完成した車両でツーリングに出かけるなど、その楽しみ方は尽きません。ぜひ中国製エンジンも含めてミニバイクのカスタムを楽しんでいただければ嬉しいです」(小平さん)
コンプリートモデルが大ヒット! それはどうなの?
最後に、ミニモトがリリースする中国製エンジンを搭載したコンプリートモデル「ミニQ」についても聞きました。
これは、ホンダ・モンキーの礎となったCZ100をモチーフに、中国人開発チームが開発したモデルで、2025年の発売以来から注文が殺到。複数回の輸入ごとに瞬時に売り切れてしまうほどの人気となっています。
このモデルもファーストモデルから少しずつ進化していると小平さんは言います。
「ミニQはこれまで多く取り扱ってきた中国製エンジン搭載のキャブレター車とは異なり、インジェクションを採用した新しいタイプの車体です。中国製エンジンそのもののトラブルは少ない一方、組み立て時のボルト類のトルク管理不足などは過去にありました。
また、コンパクトな車体の中に燃料タンク、配線、スロットルボディなど多くの部品を収める必要があります。そのため配線がフレームと燃料タンクの間に入り込みやすいことや、シリンダーヘッド周辺とスロットルボディの距離が近く、熱の影響を受けやすい点など、今後さらに改善を促したい部分は複数あります。
一方、例えばフレームの一部をプレスでへこませてスロットルボディとの干渉を避ける設計に変更したり、燃料ポンプをより容量の大きな仕様へ変更したりといった発売当初からの改善が続けられています。もちろん弊社にお客さまからいただいた不具合やご意見をその都度中国のメーカー側に継続的に伝え、今後の改良に活かしてもらっています。
また、弊社ではミニQに対して車体に1年間の保証を設けており、製造上の不具合や部品そのものに問題が確認された場合には対象部品の交換対応を行っています。ただし、交換作業に伴う工賃などはお客様にご負担いただく場合があり、これまでご不便をおかけしたケースがあったことも事実です。こうした点も含め、販売後の実際の声をメーカーへ返しながら入荷ロットごとに少しずつ完成度を高めていくことが重要だと考えています」(小平さん)
近年は電動バイクへの移行も進み、個性的でクラシックなスタイルの小型バイクは少なくなってきたなか、ミニQは昔のミニバイクを彷彿とさせるスタイリングです。「非常にコンパクトなため車に積み込み、旅先やレジャー先へ持ち運んで楽しむこともできます。単なる移動手段ではなく、“持ち運んで遊べるバイク”としての魅力も含め、今後もオススメしていきたい1台です」と小平さんは胸を張りました。