「難しかったW杯をしっかり理解しないといけない」紆余曲折を知る前日本代表主将・吉田麻也に託されたタスク

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 FIFAワールドカップ2026で史上最高のベスト8以上を狙っている日本代表。25日から千葉県内で本格始動した。初日はエースナンバー10番を背負う堂安律、エースFW上田綺世ら13人が参加。森保一監督や4月から新たに加わった中村俊輔コーチらが見守る中、ひと際大きな存在感を放ったのが、カタール大会までのキャプテン・吉田麻也である。

 2022年12月のカタール大会以来、久しぶりに代表の練習着に身を包んだ37歳のベテランは「自分自身これだけ長く代表にいたにも関わらず、いろいろな勝手を忘れていることに驚きました(苦笑)。練習着をどこに取りに行ったらいいのかも最初分からなかった。サッカーの時間の流れは凄まじいなと思いました」と神妙な面持ちでコメントしていた。

 しかしながら、第2次森保ジャパン発足からの3年間、日本代表への思いは決して薄れることはなかった。シャルケでプレーしていた2023年2月の時点では「俺のパッションは衰えてない。でも、監督が決めることだからね」と言葉を濁してはいたが「まだまだ呼ばれる可能性がある」と頭の片隅では考えていたことだろう。だが、そこから全くお呼びがからなかった。同年夏にMLS入りを決めたのも、北中米で開催される今大会を視野に入れてのことだったが、その経験値を還元するチャンスのないまま、ここまで来てしまった。

「代表の試合は全試合見ていました。強豪チームに勝てるようになったし、守備一辺倒でなくなってきた。4年前、8年前より質の高い勝ち方ができるんじゃないかと思っています」と吉田は後輩たちの成長を頼もしく感じながら、一抹の寂しさを覚えていたのではないか。

 そんな前キャプテンにこのタイミングで声をかけるのだから、森保監督の大胆さには驚かされる。「豊富な経験値を還元してもらうなら今しかない」という確信があったからこそ、指揮官は5月15日の本大会メンバー26人決定2日後、直々に電話を入れて口説き落としたのだ。

「チームに自分の経験を伝えてほしい」。森保監督からこう告げられた吉田が考えたのは「難しかった時の過去のW杯をしっかり伝えていくことの重要性」だったという。

「今回のメンバーのほとんどが2回目か1回目なので、いい感覚のW杯しか持っていない。やっぱり難しかったW杯をしっかり理解しないといけない」と本人も静かに話したが、吉田が参戦した2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会は本当に紆余曲折の連続だった。

 特に2014年ブラジル大会は初戦のコートジボワール代表戦で衝撃的な逆転負け。これで全てのシナリオが崩れ、最後まで巻き返せないまま惨敗するに至った。当時のキャプテンである長谷部誠コーチは「今回は出場国が48か国に広がり、グループ3位でも12チーム中8チームが決勝トーナメントに上がれる。そういうマインドも必要」と話したが、吉田も一人の選手として何が起きても前向きになることの大切さを現メンバーに伝授していくべきだ。

 さらに2018年ロシア大会は本番2カ月前の監督交代という激震が走り、2022年カタール大会も本番は結果が出たものの、アジア最終予選では序盤3戦2敗で敗退危機にまで瀕した。予期せぬアクシデントが起きるたびに、吉田は持ち前のリーダーシップを生かし、必死にチームをけん引した。

 特に2021年10月のサウジアラビア代表戦後の「批判されることは分かっていますが、まだ終わってはいない。終わった時にジャッジしてもらえればいいと思うし、結果が出なければ協会、監督、選手も責任を取る覚悟はできている」という鬼気迫る発言には、誰もが心を動かされた。キャプテンの遠藤航はまだ合流していないが、いざという時に覚悟を持ってもらう大切さを伝えられるのは、前キャプテンの吉田しかいない。同じくリーダー格で同ポジションの板倉滉や冨安健洋らにも的確なアドバイスができるはずだ。

 今の代表は2025年10月のブラジル戦金星、今年3月のイングランド戦の歴史的勝利など、強豪を倒してきた分、前評判も高い。順調に歩んできたチームが万が一、初戦のオランダ戦や第2戦のチュニジア戦で失敗したら、一気に崩れてしまう可能性もある。それを阻止するために、レジェンドコーチや長友佑都がいるわけだが、今回チーム加わった吉田も引き締めを図っていけるに違いない。

「この先、どうなるか分からないけど、麻也さんがW杯に入る可能性はなきにしもあると思う。ただのお客さんで来ていないのは十分に感じているんで」と名古屋グランパスアカデミーの後輩・菅原由勢も話していたが、吉田本人も「何かあったら自分が慣れ親しんだアメリカで日の丸をつけて戦う」という心意気はあるはず。飽くなき向上心と闘争心を現メンバーに植え付け、本当に戦える集団へと変貌させるべく、まずは31日のアイスランド戦までの1週間に全力を注ぎこんでほしい。

「このチームがW杯で勝つ可能性を1ミリでも1%でも上げられるように、自分が持っているものを一つでも多く伝えていきたい」という大ベテランの一挙手一投足を興味深く見守っていきたいものである。

取材・文=元川悦子

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