株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
神様:Tさん、今年のゴールデンウィークはどこかへ出かけましたか?
T:物価高もあり遠出はしませんでした。家族で近場へ、横浜港に船を見に行きました。
神様:いいですね。横浜港は全国屈指の貿易港です。輸出では名古屋港に次ぐ全国2位の規模となります。財務省が4月22日に公表した貿易統計(速報値)によれば、2025年度の輸出総額は113兆2,423億円と過去最高を更新しました。AI市場の拡大による電子部品、データセンタ向けの冷却装置や半導体製造装置の需要が膨らみ、貿易赤字が縮小しました。代替の難しい日本の半導体関連やデータセンタ関連メーカーは2026年度も好調が持続するでしょう。
T:輸出が好調なのですね。ゴールデンウィーク前には政府・日銀による為替介入観測がありましたが、今後も円安基調が続くのかにも注目ですね。
神様:船の話題が出たところで、本日は造船についてお話ししましょう。高市総理は3月10日、第3回日本成長戦略会議を開催し、戦略17分野における「主要な製品・技術等」を公表しました。
T:戦略17分野とは、高市政権の成長戦略において、官民連携で集中投資を行う中核分野としてピックアップされた分野のことですね。AI・半導体、量子、創薬・先端医療、防衛産業など、世界共通の課題解決に資する製品、サービスやインフラを提供することで、日本経済のさらなる成長を実現することを目的としています。
神様:その通りです。その分野のひとつに「造船」があります。かつて造船大国と言われた日本の新造船竣工量は、中国や韓国との競争激化、人手不足などにより減少傾向が続いていました。四面を海に囲まれ、エネルギーや食料などの自給率が低い日本にとって、貿易量の99.6%を担う海上輸送は国民生活・経済活動に不可欠なインフラです。経済安全保障の観点からも、他国に依存するリスクの低減のため造船業は重要な産業なのです。
T:貿易量の99.6%ですか。ホルムズ海峡関連の報道を見ても、船の重要性をひしひしと感じます。
神様:国土交通省は造船ワーキンググループの中で、「造船業再生ロードマップ」を策定しました。ロードマップでは2035年に2024年比で約2倍となる1,800万総トンの建造を目標に掲げています。2035年までに官民で1兆円規模の投資実現を目指します。

T:大規模な投資となりますね。しかし、そもそも人手不足によって造船竣工量が減少傾向となっていたのですから、さらに人手不足が顕著になっている現在では、目標までの道のりは厳しいものとなることが予想されます。”建造量2倍”をどうやって実現するのでしょうか?
神様:おっしゃる通りです。帝国データバンクの分析によれば、造船業界の取引額が2倍、つまり100%の増加となる場合、1.2万人が不足し、現在と同じ人員で建造する場合は3.9%の生産性向上が必要と示されています。そして、少子高齢化が進んで人員が現状より1割減少すると、生産性を13.9%向上させなければなりません。

T:この場合の生産性とは何になるのでしょうか?
神様:帝国データバンクでは、生産性の指標として売上高を従業員数(正社員)で除算した「1人あたり売上高」を用いています。つまり、3.9%の生産性向上とは、従業員1人当たりの売上高を3.9%向上させなければならない、ということです。
T:なかなか厳しい目標ですね。
神様:人員確保はもちろん必要ですが、それだけでは補えません。生産設備の機能向上、デジタル化、AIロボットの活用などの省人化投資による生産性向上が重要となります。今後さまざまな造船業界の省人化に貢献できる企業の活躍が期待できるでしょう。
T:かつての造船大国から未来の造船大国へ、日本の貿易を支える“次世代の造船”に貢献する企業に期待したいと思います。
(この項終わり。次回5/27掲載予定)
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