第80話 師走は株も忙しい!

株の神様の声が聞こえるというTさん。投資の心構えやコツを、時折神様から伝授されています。年の瀬も近づき、何かと慌しい日々ですが、投資の観点から年末について話をしています。

神様: 12月は師走。本来、師走は旧暦ですから、12月でも下旬から翌年2月上旬頃までにあたります。

T:その字面から、師が走るほど忙しいとされるようですが、この「師」が何を指すのかは諸説紛々のようですね。学校の先生、お坊さん、寺社への参拝・参詣者と、様々な見方があります。

神様:実は、師走という漢字自体意味はなく、単なる当て字であるとの見方もありますよ。日本書紀や万葉集などでは、十有二月(十二月)をしわすと呼んでいたとされる記述が残っていますので、やがてそれに師走を当てるようになったという説です。

T:それは、知りませんでした。

神様:「トシハツル(歳極・年果・歳終)」の意味とする説もあり、これだと誰も走りません。

T:そうですね(笑)。けれども、やっぱり、年末は師に限らず、みんな忙しいですよね。

神様:株式市場でも年末多忙な分野があります。わかりますか?

T:はい、新規上場銘柄ですよね。新規上場、英語で言うとInitial Public Offering、略してIPO、未公開企業が上場企業となることです。

神様:その通り。上場にあたっては、まだ規模が小さいので、東証マザーズ市場や東証JASDAQ市場などの新興市場が中心となります。

T:IPOは財務諸表をきちんと開示し、 私企業から公の器となるための登竜門 とも言われます。

神様:そうですね。新規上場するには上場する市場ごとに決められている、時価総額、利益、株主分布などの様々な基準をクリアして、認可される必要があります。かなりの労力に加え準備金も必要ですが、メリットとしては 新しく株式を発行することで、資金調達の多様化 が図れます。

T:また、IPOで知名度が上がれば、人材を採用しやすくなるというメリットもありますよね。

神様:そのIPOですが、どうも年末に時期が集中する傾向にあります。2016年は通年で83銘柄が新規上場しました。そのうち12月のIPOが14銘柄で、全体の17%を占めていました。本年12月もIPOラッシュとなりそうです。

T:私は新興企業を応援したい派なので楽しみですが、やはりリサーチや分析で忙しくなりますね(笑)

神様:ところで、IPOで公開される株は、往々にして上場後の初値が売出価格を上回るケースが一般的です。投資家にとって、あまり馴染みのない銘柄に投資してもらうわけですから、売出価格は類似銘柄などと比べてバリュエーション面で割安に設定する傾向があるためです。あなたは、初値が売出価格をどの程度上回っているかご存知ですか?

T:2倍くらいだったような覚えがあります。

神様:さすがよく勉強しているようですね(笑)。2017年では11月までの61銘柄ベースで、1銘柄あたり単純平均108.3%増でした。およそ2.1倍です。

T:IPOが人気の理由もわかりますね。

神様:師走ともなりますと日本の株式市場は売買のメインプレイヤーである外国人投資家が休暇で不参加となりがちなこともあり、 個人投資家が参戦しやすい中小型、新興市場が賑わう というのが例年の経験則でもあります。

Tさんは、中小型、新興市場が活況で大忙しとなりそうな師走を、良いかたちで迎えられるように、忘年会もほどほどに、投資の勉強を怠らないようにしようと思いました。

(次回12/13掲載予定)

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