株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。
T:10月27日に衆議院総選挙の投開票が行われました。与党が議席数の過半数を割る、現政権にとっては厳しい結果となりました。
神様:物価高騰などで国民の生活が苦しい状況が続いています。少子高齢化の進行も止まりません。今の生活だけでなく、将来に対する不安も反映した結果となりました。
T:今後は、11月11日に特別国会が開かれ、首相指名選挙が行われる予定ですが、引き続き動向に注目ですね。
神様:さて、今日は工作機械受注額を見てみましょう。日本工作機械工業会が10月に発表した9月の工作機械受注額(速報)によると、内需が前月比でプラス30.1%となる418億円、外需が前月比でプラス6.2%となる834億円となり、全体ではプラス13.1%となる1,252億円となりました。
T:工作機械とは、製造業などで使われる機械ということですか?
神様:その通りです。日本工作機械工業会によると、工作機械は「機械部品を必要とする形状・精度に効率よく加工する」ために使われます。あらゆる機械や部品は工作機械を通じて作られることから、工作機械は「機械を作る機械」、「マザーマシン(母なる機械)」とも言われ、工作機械産業は基幹産業に位置付けられます。
T:つまり、工作機械受注額は、製造業などの動向を知ることができる重要な指標となる、ということですね。
神様:おっしゃる通りです。受注動向は製造業の景気動向を示すことから、景気の指標として注目されます。工作機械受注額は、コロナ禍での落ち込みから2022年にかけて順調に回復してきましたが、その後は横ばいが続いていました。5月には17カ月ぶりにプラスとなりましたが、8月に4カ月ぶりのマイナスとなるなど、直近の動向が注目されていました。
T:9月は全体でプラス13.1%となったことは、今後に期待が持てますね。
神様:年初からの累計では前年同期に及びませんが、内需回復の持続が期待されるところです。国内の設備投資の状況を見てみましょう。2024年9月調査の日銀短観によると、2024年度の大企業・製造業の設備投資計画は前年度比で18.8%増。全規模・製造業でも前年度比で17%増と、増加する見通しです。景況感の改善に加え、円安の進行や地政学的リスクに対応したサプライチェーンの再構築などの需要が国内の設備投資を活発化させると見込まれます。
T:それが今後の工作機械受注額の増加にも期待されているわけですね。
神様:その通りです。工作機械の用途別での主な出荷先を見ると、最も大きいのは自動車産業です。次に大きいのが半導体や一般機械向けとなります。国内の自動車及び半導体産業の設備投資は、2024年だけでなく、2025年以降の活性化が見込まれています。そのため、2024年後半から2025年にかけて工作機械受注が再び増加する局面を迎えると見られているのです。
T:今後の自動車産業の動向に注目ですね。
神様:長期的にはEV(電気自動車)の投資活発化が工作機械の需要拡大を促すとみられます。EV部品向け複雑形状加工や高精度加工など、従来のエンジン車に代わり新たな需要が拡大すると思われます。EVの中では、外部で充電できるハイブリッド車である「プラグインハイブリッド車」の普及拡大が見込まれ、工作機械受注額の増加に追い風となるのではないでしょうか。
T:なるほど。これまで横ばいだった工作機械受注に“夜明け”が訪れそうですね。外需の動向は米国や中国など海外の動向に影響されますから、世界経済が安定して成長していくことも願いたいです。
(この項終わり。次回11/13掲載予定)
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