第417話 歯科技工士が急減・進むDX化 変貌する歯科治療に期待

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


T:9月16日は敬老の日。厚労省によれば、2024年9月1日現在で日本の100歳以上の高齢者数は95,119人で、昨年と比べて2,980人の増加となったそうです。1963年の100歳以上の高齢者数はわずか153人だったそうですから、本当に驚きです。

神様:今後はさらに、100歳になってもまだまだお元気な方が増えていくでしょう。今働き盛りのTさんも、100歳まで生きられる可能性が大いにあります。

T:まさに人生100年時代ですね。私が100歳というのは想像つきませんが、暴飲暴食は避け、運動も適度に行い、健康を保ちたいものです。

神様:ところでTさん、歯の健康はどうですか?最近は、歯周病とメタボリックシンドロームに関係性があることも明らかになってきています。

T:それ、聞いたことがあります。

神様:近年の研究によって、歯周病が原因で噛む機能が低下し肥満になりやすくなる、歯周病菌が血管に入り、インスリンの働きが悪くなって糖尿病を悪化させることなどが明らかになっています。歯医者さんでの定期的な検診、歯周病の予防や治療の重要性が増していると言えるでしょう。

T:高齢になるほど歯は弱くなるわけですが、そう言えば「80歳になっても20本以上自分の歯を保つ」ことを推進する「8020運動」という運動がありましたね。現在はどのような状況なのでしょうか?

神様:8020運動は、当時の厚生省と日本歯科医師会によって1989年に始まりました。当初、8020達成者は10%にも満たなかった状況でしたが、2016年に50%を達成しました。80歳以上の2人に1人が、自分自身の歯が20本以上あるということです。2022年時点では、その割合は51.6%まで増加しています。

T:凄いことですね。高齢者が増加している中で、歯の健康増進も図られているのは背景に歯科治療の大きな努力や進化があるようにも想像します。

神様:歯科医療の現場ではDX化が進展しているところです。日本の歯科医療費は緩やかに拡大していますが、その一方、歯科技工士の数はコロナ禍を経て急減しています。

T:歯科技工士は、入れ歯、被せ物や詰め物などを作成、加工、修理する医療技術専門職ですね。一体なぜ急に減少したのでしょうか?

神様:要因としては、労働時間の割に収入が少ないことや歯科技工士の高齢化などが挙げられています。最近では、歯科技工士の手作業に代わり、コストや製造日数の削減が期待できる口腔内スキャナー、CAD/CAM、3Dプリンターなどへの置き換えが進み、人手不足を補っています。2024年4月からは口腔内スキャナーの利用に保険点数が付加されました。今後さらにDX化が進むことでしょう。

T:なるほど。

神様:歯科治療の材料面でも変化が見られます。金属に代わって樹脂のレジンへの切り替えが進んでいます。レジンは金属よりアレルギーリスクが低く、価格も安いのが特徴です。審美的に白い歯が好まれる傾向が強まる中、「白い詰め物」と言われるレジンの色調の広がりも、選択のしやすさにつながっているようです。

T:金歯や銀歯ではなく、“詰め物も白い歯”であれば抵抗なく選択できますね。

神様:世界保健機関(WHO)によれば、世界人口の3分の1がむし歯を治療しないまま放置しているとされています。さらに、低所得から高所得までの所得別でむし歯の症例数を見ると、1990年から2019年までの変化率が特に高いのは低・中所得層であることがわかっています。

T:つまり、低・中所得層では、むし歯が放置され、症例数が拡大しやすい傾向にあるということですね?

神様:その通りです。これは歯科業界にとっては大きなチャンスでもあります。今後は安価な歯科治療材やDX化が進む製造過程の活用が広がり、より幅広い人たちに質の高い歯科医療サービスが提供されるようになるでしょう。

(この項終わり。次回10/2掲載予定)

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