第413話 災害リスク高まる日本 インフラ老朽化は投資増の契機に

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


T:毎年夏になるとゲリラ豪雨が発生していますが、今年は都心で道路の冠水などの被害が多く発生していますね。

神様:都内のみならず国内で異常気象が見られるようになっていますから、いま一度私たちの日頃の備えを見直すことも大切ですね。

T:ところで、前回は日本全国の水道設備の老朽化が進んでいるというお話でした(第412話 日本の水道「危機的な状況」に 設備更新待ったなし)。考えてみると、これは水道だけの問題ではなく、社会インフラ全体の問題でもありますよね。

神様:おっしゃる通りです。道路、トンネル、河川、水道、港湾などのインフラは、まさに日本を支える土台です。自然災害対策だけでなく、経済成長を支えてきたのもこれらのインフラです。

T:これらの社会インフラは、水道と同じく高度経済成長で急成長してきたのですよね?そうすると、現在は全体的に老朽化が進んでいるのでしょうか?

神様:お察しの通り、現在社会インフラの老朽化は大きな課題となっています。災害リスクが高まる中で老朽化したインフラがダメージを受ければ、社会にもたらす影響は多大なものであると言わざるを得ません。

T:やはりそうですか。

神様:日本の社会インフラは、高度経済成長期に整備が集中しました。1964年の東京オリンピック開催を契機に、短期間のうちに東京を中心に大規模なインフラが整備され、今でもそれらは大きな財産となっています。

T:東海道新幹線の開業や首都高速道路の開通も同時期でしたね。60年が経ち、その間日本を支え続けてきてくれたわけですからね。

神様:集中して整備されてきた分、今後20年間で建設後から50年以上経過する施設の割合が高まる見込みです。すなわち、これからは一斉に老朽化するインフラを維持管理、または更新していくことが求められるということです。言い換えれば、今後は関連工事の需要が継続するとも想定されます。

T:ということは、建設関連企業にとっては良い機会となるということですよね。

神様:国内の建設投資額は、2011年度以降で増加傾向です。2011年3月に発生した東日本大震災の復興需要、そして民間設備投資の回復が要因と言えます。2024年度予算における公共事業関係費を見ると、2023年度当初予算から26億円増となる6兆828億円です。そのうち4兆330億円が国土強靭化に対して計上されました。

T:国土強靭化・老朽化インフラ対策の関連企業としては、大手ゼネコンを筆頭に土木工事、橋梁、道路などの施工会社や、関連資材メーカーなどが挙げられるでしょうか。これらの企業にとっては今後の需要拡大が見込まれますね。

神様:さすがTさん、鋭いですね。その通りです。

T:そう言えば、今年の初めに発生した能登半島地震では、現在も復旧対応が続けられています。一部では復興へのスピードが遅いとの指摘もありますが、報道によれば被災地への交通の便の悪さなども影響しているようです。建設業界と言えば、人手不足が深刻化している業界でもあります。労働人口が減少していく中で、どのようにインフラ対策を進めていけるかが大きな課題ですね。

神様:関連企業各社がどのようにそれぞれの強みを生かし、課題を乗り越えられるかに注目しましょう。技術革新も重要です。インフラ整備ではAIが活用される機会が増えています。AIを活用した画像認識による老朽化した設備の検出などは盛んに研究され、民間企業での活用も増えていくと思われます。これまで人手に頼っていた点検も、工夫して機械的にインフラ画像を取得する方法が活用されれば、人の活用の仕方も変化していきます。

T:インフラ整備でもDXが欠かせないということですね。社会インフラの老朽化に対して、60年前とは異なったアプローチで、どのように課題を解決していくのか注目です。私もこれからの日本のインフラを作る企業を応援したいと思います。

(この項終わり。次回9/4掲載予定)

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