第412話 日本の水道「危機的な状況」に 設備更新待ったなし

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


T:8月8日、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生しました。今回は、日ごろの地震への備えを改めて確認する機会となりましたね。

神様:Tさんは、この地震を受けてどんなことをしたのですか?

T:大地震発生時の避難経路、避難場所の確認、避難用リュックの内容の確認、緊急時の食料・飲料や備品の確認などを行いました。また、家族との連絡の取り方の確認も改めて行ったところです。スーパーへ行くとお米や飲料水の在庫がだいぶ少なくなっていましたね。緊急備蓄品としての買い占めが起こっていたのでしょうね。

神様:企業による商品の提供量は十分にあるので、慌てて買い込まなくても大丈夫ですし、むしろ買い占めによって普段必要として買っている人が買えなくなる方が問題かもしれませんね。

T:こういう時に慌てないためにも、日ごろからの備えが大切です。水であれば水道水を活用できます。インターネットなどでは水道水の備蓄方法について様々な情報が上がっています。何と言っても、日本の水道普及率はほぼ100%です。

神様:その通りです。ところでTさん、日本の水道管の合計の長さはどのくらいだと思いますか?

T:水道管の長さですか?全く予想していなかった質問ですが、日本中を張り巡らされていますから、地球一周分くらいはあるでしょうか?

神様:日本の水道管の合計の長さは、およそ74万kmです。これは日本列島の南北の距離の246倍です。地球一周の距離は40,075kmですので、地球の18.5周分となります。

T:18.5周ですか。思っていたよりもずっと長いですね。

神様:日本の近代水道は、1887年に横浜市で川から取水した水をろ過し、圧力をかけて給水したことに始まります。その後、高度成長期において産業の発展、生活水準の向上に伴い増加していった水需要に対応するために、水道整備は急速に発展してきたのです。

T:高度経済成長期と言えば、だいたい1955年から1973年あたりまでですが、この時期に水道普及率も急激に上昇しているわけですね。まさに、日本国民を支えてきた重要設備です。

神様:ところで最近、報道などで水道管の破裂などの事故をよく目にしませんか?

T:そう言われればよく見るような気がします。大量の水があふれ、断水も発生しているようですね。ひょっとして、水道管の老朽化が進んでいるのでしょうか?

神様:その通りです。水道管の法定耐用年数は40年です。高度経済成長期に急速に普及してきた水道管が、現在老朽化の問題に直面しています。全ての水道管のうち、法定耐用年数を超えた水道管の割合を「管路経年化率」と言い、年々上昇傾向にあります。一方で、更新された水道管の割合は低下基調です。少子高齢化による人口減少や技術者の高齢化などが要因です。水道管更新工事の進展は鈍く、大きな課題となっています。ライフラインの要である水道設備は、今危機的な状況にあると言えるでしょう。

T:それは大変だ。どのような解決策が実施されているのでしょうか?

神様:水道法の見直しのほか、水道事業の広域化や官民連携が図られています。また、アセットマネジメントと呼ばれる、水道事業者による更新需要と財政収支の見通し試算の実践が推進されています。検査や工事のための技術革新も必要です。

T:こういう時こそ、投資の出番ですよね。水道事業に関わる企業を応援し、日本の重要ライフラインを守りましょうよ。

神様:すばらしいですね。厚労省では「いま知りたい水道-日本の水道を考える-」というパンフレットを発行し、日本の水道のリアルな情報をわかりやすく伝えています。このように国民に水道事業をよく理解してもらうことも重要な活動です。なぜなら、月々支払っている水道料金は日本の水道事業の維持・発展に活用されるものだからです。これは広い意味では未来の水道事業への投資とも言えますね。

(この項終わり。次回8/28掲載予定)

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