第410話 世界で最も睡眠時間が短いのは日本人 注目される「スリープテック」

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでクリームソーダを飲みながら投資談義を行っています。


T:7月26日からパリ五輪が始まりました。連日のように日本代表選手の活躍が見られますが、ついテレビで結果を追ってしまい最近は寝不足気味です。

神様:日本とフランスの時差は7時間。日本の深夜時間帯にメダル獲得がかかった試合が行われることが多いですからね。しかし、睡眠不足は注意しなければいけません。猛暑で身体の疲労が溜まっていますし、睡眠不足は熱中症のリスクを高めるとも言われています。

T:やはり睡眠はしっかり取らなければいけませんね。

神様:ところでTさん、世界で最も睡眠時間が少ないのはどこの国だと思いますか?

T:どこでしょうか?ひょっとして、日本ですか?

神様:はい、日本です。OECD(経済協力開発機構)が2021年に行った調査によると、加盟国中で睡眠時間が最も短いのは日本であり、睡眠時間は7時間22分でした。

T:え、7時間22分で最も短いのですか。私には7時間もあれば十分と感じてしまいます。他国の睡眠時間はもっと長いのですね。

神様:ちなみに、OECDは各国で男女別に細分化された結果を出しており、それによると最も睡眠時間が短いのは日本人女性の7時間15分となっています。

T:なるほど。男女間で差があるのはなぜなのでしょうか?

神様:この調査では、各国の生活時間が比較されています。睡眠時間の他にも、給料などをもらって働く有償労働時間や、家事などの無償労働時間、飲食時間などを比較しています。日本では男性の有償労働時間、つまり働いている時間が長く、その分女性の無償労働時間の分担の割合が大きくなっている傾向があります。

T:なるほど。それが日本人女性の睡眠時間の短さにつながるわけですね。根深い問題ですね。

神様:各国の調査結果の違いは興味深く、一度じっくり読まれることをおすすめします。いずれにしろ、日本人はほぼすべての世代で睡眠不足です。日本では2024年度から、「21世紀における第三次国民健康づくり運動(健康日本21第三次)」がスタートし、適正な睡眠時間と睡眠休養感の確保に向けた推奨事項が掲げられています。

T:そう言えば、コロナ禍でも”睡眠の質”が大きく注目されましたよね。快眠を促す健康食品やグッズが多数登場したのを覚えています。

神様:コロナ禍では、外出自粛によってそれまでの生活習慣が変化し、寝る時間や起床時間が遅くなったり、太陽光に当たる機会も減少するなど、睡眠習慣にも変化が起きやすい状況でした。睡眠の質を高めようとする意識も、その中で生まれたものでした。不眠は、個人の健康を損なうだけでなく、経済活動にもマイナスの影響を及ぼします。最近は睡眠に関わる問題をIT技術などでサポートする「スリープテック」が注目されていますが、今後の市場の拡大が期待されています。

T:スマホアプリなどで、毎日の睡眠を記録するツールなどが登場しています。バイタルデータとの連携も重要になってきそうですね。

神様:スリープテックでは、「睡眠導入」、呼吸・寝返りの回数などを記録する「睡眠の可視化」、さらにはスムーズな起床を促す「覚醒促進」など、幅広いニーズに対するサービス・製品が提供されています。デバイスにはスマートベッド、指輪型や腕時計型のデバイス、睡眠時の体の状態を記録するアプリなどが使われます。情報サイト「Global Market Insights」によれば、2032年の世界のスリープテックデバイス市場は952億ドルとなり、2023年から年平均成長率18.2%で成長していくことを予測しています。「21世紀における第三次国民健康づくり運動」でも、こういったスリープテックをどのように活用していけるかがひとつのポイントとなるでしょう。

T:良い睡眠と健康をデジタル技術でサポートする、まさにこれからの時代にふさわしい取り組みと思います。今後の動向に期待ですね。

(この項終わり。次回8/14掲載予定)

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