第405話 日本の医療費抑制へ”期待の一手”フィットネスクラブに注目

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:少子高齢化が加速する中、日本の国民医療費が増加しています。1990年度の国民医療費は20.6兆円で、国民一人あたりの医療費は16.7万円でした。しかし、2021年度の国民医療費は45兆円で、国民一人当たりでは35.9万円へと増加しています。

T:2倍以上に膨れ上がっているわけですね。

神様:ところで、Tさんは国民医療費が最も高い割合の年代はどの年代だと思いますか?

T:おそらく高齢者ですよね。特に75歳以上の後期高齢者でしょうか。

神様:どうしてそう思われますか?

T:病院で長期間過ごす方も多いでしょうし、高齢の方ほど持病の薬などを求められると思うので。

神様:厚生労働省が公表している2021年度の国民医療費の概況によると、年齢階級別の医療費の割合は、0~14歳が5.4%、15~44歳は11.9%、45~64歳は22.1%、そして65~74歳が22.3%でした。

T:そうすると、75歳以上は残りの割合となるので38.3%ですか。

神様:その通りです。また、診療種類別の国民医療費を見ると、最も多いのは医科診療医療費で71.9%、そのうち入院医療費が37.4%となり、構成割合の中で最も大きな割合を占めています。

T:やはり思っていた通りですね。そして、来年2025年には団塊の世代が75歳以上となります。国民医療費はさらに増加することになりますね。

神様:「医療費適正化」という取り組みがあります。国、自治体や医療機関等が一体となり、国民の健康増進や医療費の適性化を進めるものです。例えば、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及をはかったり、長期入院となりがちな高齢者については重症化を防止し、在院日数の短縮を目指します。薬の多剤投与の見直しもされています。

T:高齢者になる前の健康が重要ですね。そう考えると、生活習慣病の予防も将来的な医療費抑制のためには大事なことですよね。

神様:おっしゃる通りです。健康診断や保健指導を通して糖尿病患者、またはその予備軍を健康な身体へと導くことも医療費適正化の大事な施策です。しかし、現状は根本的な解決には至っていません。日本の医療制度は、世界では他の国に比べて非常に充実している制度です。しかし、そのために国民の健康維持に対する意識が低いのではないかと思われます。

T:え、それはどういうことでしょう?

神様:例えば、海外では日本のような充実した健康保険制度は整備されていません。そのため、病院で受診したり救急車を呼んだだけで高額な医療費がかかるケースもあるのです。別の捉え方をすれば、病院にかからないために、なるべく自分で健康管理をしようという意識が生まれやすいとも言えます。

T:なるほど。でも、日本人も健康意識は高いと感じるのですが。私の周りではジムによく行きますし、高齢者でも健康な方は大勢いらっしゃいます。

神様:おっしゃりたいことはよくわかります。しかし、医療費を抑制できるほどではないのが現実です。ところで、フィットネスクラブはこれからさらに注目されるでしょう。

T:健康維持のためには、食事と運動習慣が大事ですからね。フィットネスクラブと言えば、コロナ禍では大きなダメージを受けましたね。

神様:コロナ禍ではフィットネスクラブの会員数が大きく減少しました。しかし、事業所数は今も高水準を維持しています。最近のジムは多様化し、本格的なタイプから隙間時間や運動以外の利用が可能なタイプも登場しています。これからは生活習慣病の予防、そして医療費削減への効果も期待されるでしょう。

T:フィットネスクラブが医療費抑制の“期待の一手“になるかもしれませんね。

(この項終わり。次回7/10掲載予定)

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