第72話 ESG投資って何?(その2)

株の神様に投資の本質を教えてもらっているTさんは、奥さまのA子さんや高校生の娘Y、中学生の息子Sにも、将来、社会を「生きぬく力」としてお金の話は大切との観点から、そのポイントを伝えています。今回は、最近注目の『ESG投資』、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別する投資手法について話をしています。

Y:ESG投資って、考え方がとても良い気がするけど、日本ではあまり広まっていないの?

T:日本でも大きな動きがあるよ。約149兆円(2017年6月末)の運用資産を持ち、世界最大の年金基金として、公的年金積立金の管理、運用を行うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資の考え方を採用したんだ。

A子:それは、すごく画期的なことなのね?

T:そうだね。具体的には、国内株式を対象にESG要素を加味して銘柄を組み入れる株価指数(ESG指数)を3つ採用し、それぞれの指数に連動する運用を始めたんだ。今後は他の運用機関への広がりが期待できると思うよ。

S:ぼくたちもESG投資をしよう!

T:そうだね!と行きたいところだけど、個人でESGを重視する企業を発掘するのはなかなか簡単じゃないぞ。

A子:確かに数字やランキングがあるわけではないものね。

Y:テレビのコマーシャルを見てると、どの企業も環境にやさしいし、社会のためにって言っているように見えるしね。

T:GPIFが採用した指数は、FTSE Blossom Japan Index(151銘柄)、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数(251銘柄)、MSCI日本株女性活躍指数(212銘柄)なんだけど、こうした指数の構成銘柄となっている企業を参考にするのも一つの方法だね。これは、ESG投資の代表的手法で、ESG評価の高い企業を投資対象に組み込む「ポジティブ・スクリーニング」という考え方だけど、逆に反社会的活動にかかわったり、環境を破壊したりしている企業を投資対象から外す「ネガティブ・スクリーニング」もあるんだよ。

S:あっ、ESGの反対の姿勢の企業には投資しないという考え方もあるんだね。

T:そうなんだ。他にも議決権行使などで投資先企業の行動に影響を与える「エンゲージメント」や、慈善事業などの社会貢献と経済的利益の両方をねらう「インパクト投資」といった手法もある。

A子:ただ、意地悪な見方をするとESGに熱心な企業に投資して、本当に儲かるのかしら。環境や社会のためにコストをかけるわけだから、その分、利益は減るわけでしょ。

T:ESG投資は、環境、社会、企業統治を重視することが結局は企業の持続的成長や中長期的収益につながり、財務諸表などからはみえにくいリスクを排除できるとの発想があるんだ。だから中長期的に見れば儲かるというか、そもそもちゃんと存続する企業を選べるという考え方だね。今後は、これら3つの分野の課題は全ての企業にとって関係するものだから、通常の資産運用においてもESGを考慮する考え方になってきているようだよ。

(この項おわり次回10/18「『音』は有望な投資分野?」を掲載予定)

提供:いちよし証券
「兜のささやき」全話はこちら
○当記事は各種の信頼できると考えられる情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保障するものではありません。
また、今後予告なく変更される場合があります。

商号等/いちよし証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第24号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会