第385話 ニーズ高まる「海洋開発」 海洋関連投資に注目

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:日本は四方を海に囲まれた海洋国家です。今日は「海洋開発」について見ていきましょう。

T:海洋開発という言葉は幅広い意味を持っていますが、どのような事業を指すのでしょうか?

神様:私たちは、日々海洋資源を利用して生活しています。最も古く、身近なものは漁業でしょう。それから、技術が進むにつれて海上輸送、干拓や埋め立てが行われるようになりました。さらに技術が進歩し、海洋のエネルギー資源開発、再生可能エネルギー開発、海底鉱物資源開発などが行われるようになりました。それに加えて近年は、災害対応もあります。

T:それらがすべて、海洋開発に含まれるわけですね。

神様:その通りです。海洋開発に関して、昨年大きな話題となったことがありました。昨年12月22日、岸田首相が総合海洋政策本部の会合にて、「小笠原海台海域の大部分を、我が国の延長大陸棚と定める」と発言したのです。

T:大陸棚って延長できるのですか?

神様:はい。そもそも大陸棚とは何かご存知ですか?1994年に発効した国連海洋法条約(UNCLOS)は「沿岸国の200海里までの海底とその下」をその国の「大陸棚」と定めています。大陸棚には様々な生物や天然資源が存在しており、海洋資源の確保に関して重要な場所です。

T:日本はどうやって延長したのでしょうか?

神様:もちろん勝手に延長することはできません。大陸棚限界委員会(CLCS)に申請し、勧告を受ける必要があります。世界各国で大陸棚の延長を目指した動きが見られます。外務省によれば、過去20年間で84件がCLCSに申請され、実際に勧告が出されたのは29件とのことです。

T:厳しい審査があるのですね。延長された大陸棚は、日本にとっては貴重な資源となりますね。

神様:海洋開発分野は、今後の成長市場と位置づけられています。昨年12月に、海洋産業研究・振興会が発表した「海洋開発の市場構造に関する調査」を見てみましょう。この調査では、地方公共団体56団体と民間企業99社へのアンケート調査が行われました。それによると、各地方自治体による海洋関連の投資額が堅調に推移していることがわかります。過去20年間では、2002年度から減少傾向にありましたが、2011年度からは微増となっていますね。

T:地方自治体は、海洋開発のどのような分野に投資しているのでしょうか?

神様:事業別の投資額を見ると、港湾整備が最も多く、続いて水産基礎整備、海岸整備などの割合が大きくなっています。また、近年は自治体予算の割合が高まっています。国庫に依存せず、自治体独自で事業を進める機会が増える傾向にあると言えます。

T:自然災害からの復旧や防災の観点からも、港湾整備や海岸整備は重要ですよね。多くの方が犠牲になられた「令和6年能登半島地震」では、改めて津波の恐ろしさを目の当たりにしました。今後は、発生が予想されている南海トラフ地震への備えも必要です。

神様:その他にも、足元では国防上からの港湾整備も求められています。また、洋上風力発電の建設も進められています。今後はこれらのニーズが海洋関連投資を押し上げていくと考えます。

T:世界人口の増加や途上国の発展により、今後のエネルギー需要はさらに増えていきますが、海洋エネルギー資源開発や海底鉱物資源開発も求められますね。

神様:これまで日本では海洋資源開発産業が育っていませんでしたが、国を挙げて先行する国に追いつく必要があります。日本周辺の海底は相対的に若い地層と言われています。軟弱な地盤に囲まれているケースが多いのです。そうなると、より高度な技術や資機材、特殊な船舶(作業船)が必要となります。そのようなニーズに対応できるマリコン(マリンコンストラクター)や、資機材を扱う企業にとって長期の追い風になることが予想されます。

(この項終わり。次回2/14掲載予定)

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