第384話 半導体メモリ市場が回復する2024年 メモリ企業の「逆襲の年」に

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


T:1月22日、日経平均株価は3万6,500円台まで上昇し、バブル経済崩壊後の高値を33年11カ月ぶりに更新しました。その後も高値を維持していますね。

神様:日本のデフレ経済からインフレ経済への転換や、上場企業による株主価値向上への取り組みなどが海外から評価されています。その影響で海外勢の投資マネーが日本株に流入していると見られます。今後も相場の先行きに対しては強気な見方が広がっており、日経平均株価が1989年12月につけた過去最高値3万8,915円を上回る展開も視野に入ってきているようです。

T:え、日経平均の過去最高値を上回る可能性もあるのですか?

神様:可能性はあります。米国ではNYダウやS&P500が最高値を更新し、欧州でもSTOXX欧州600がコロナショックによる世界的な株価急落を乗り越え、2022年1月には1998年9月の指数算出来の最高値をつけています。一方で、日経平均株価は1989年の過去最高値を下回ったままです。割高感はありません。

T:コロナ禍を乗り越えた世界経済の”逆襲”というわけですね。今後の動向に注視したいと思います。

神様:さて、今日は半導体メモリ市場についてお話ししましょう。2024年は、世界の半導体メモリ市場が大きく回復する年となりそうです。

T:WSTS(世界半導体市場統計)によれば、2023年の半導体市場は前年比で9.4%減のマイナス成長になると予測されていましたね(第377話 半導体サプライチェーンの強靭化進む 日本が受ける恩恵とは?)。

神様:半導体市場の中でも、半導体メモリはコロナ禍による在宅勤務シフトなどの恩恵を受け、需要が大きく拡大しました。一方で、2022年以降は急激なインフレを背景としたグローバルでの景気減退により需要が落ち込み、半導体メモリ市場は在庫調整を余儀なくされました。

T:半導体不足から一転して在庫過剰になったということですか?

神様:はい。世界の半導体メモリ市場の推移を見ると、2023年が大きく落ち込んでいることがわかります。しかし、WSTSは2024年の半導体メモリ市場は前年比で44.8%増の1,298 億ドルになると予測しています。在庫調整が一巡し、需給の改善が図られることが市場の回復要因になると見られているためです。

T:半導体市場の回復には、生成AIの急拡大が大きく貢献しているのでしたね。半導体メモリ分野ではどのような貢献が見られるのでしょうか?

神様:生成AIの普及により、半導体メモリにも新たな需要が生まれています。生成AIは膨大な行列演算を行います。その数値データを一時保存するのは半導体メモリです。現在、生成AIには「HBM(高帯域幅メモリ)」と呼ばれる高容量のDRAMメモリが用いられています。したがって今後HBMの世界市場は、2023年から2029年にかけて3.9倍に拡大すると見込まれています。

T:半導体メモリの需要回復に加えて、HBMという新たな需要も創出されるため、前年比で44.8%増というWSTSの市場予測になっているということですね。

神様:その通りです。

T:2024年は、半導体メモリの関連企業にとっても”逆襲”の年になりそうですね。各企業の活躍が楽しみです。

(この項終わり。次回2/7掲載予定)

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