第380話 世界でニーズ拡大する「データセンター」 生成AI開発の力に

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:今日は、世界的にデータセンターのニーズが高まっていること、今後のデータセンターの重要性についてお話しましょう。Tさんは、データセンターとは何をしているところか、ご存知ですか?

T:様々な企業のサーバーやネットワーク機器をまとめて設置している場所ですよね。

神様:その通りです。データセンターの中には、ラックと呼ばれるサーバーやスイッチ、ネットワーク機器などを設置するスペースが並んでいます。建物は地震に強い構造で、非常時に備えて無停電電源装置が装備されているなど、災害に強いことも重要です。各企業の情報・データを一手に管理しているわけですから、セキュリティ管理も厳しく行われています。

T:最近ではクラウドサービスの広がりによって、大きなデータセンターが世界各地にありますよね。

神様:よくご存知ですね。クラウドサービスには、安定的にデータを管理できる大規模なデータセンターが欠かせません。総務省の令和5年版情報通信白書によれば、世界の大規模データセンターの数は、2022年の第2四半期末に800を超え、さらに増加傾向がつづいている状況です。クラウドサービスやAI、IoTの普及により、データセンターのニーズは今後さらに拡大していくでしょう。Tさんは、世界の大規模データセンターのシェアで、最も大きな割合を占めている国はどこだと思いますか?

T:それは、米国ですよね。

神様:その通りです。米国が世界で半数以上となる53%を占めています。その他、中国が15%、欧州が16%、中国以外のアジア・太平洋地域が11%です。

T:日本は、中国以外のアジア・太平洋地域の11%中の何%かを占めているということですか?

神様:はい。ここ数年で、米国や中国のシェア拡大が目覚ましい状況です。日本の半導体を柱としたデジタル産業を支えるのは、データセンターなどのインフラです。世界的にデータセンターのニーズが拡大していく中で、日本でもさらなる強化が必要でしょう。

T:日本が力を入れている生成AIの開発にとっても、データセンターは重要ですよね。

神様:おっしゃる通りです。独自の文章、音楽、デザインなどを作成する生成AIの開発には、膨大なデータを生成AIに学習させなければなりません。データセンターのサーバーがその学習の場となりますから、国産の生成AI開発にとっては国内のデータセンターが重要になります。

T:海外のデータセンターだと現地の法律に縛られることや、セキュリティの面で使いにくいところがありますよね。

神様:英国のニュースサイト「Tortoise Media」では、毎年世界各国のAI開発力を調査してランキングを発表しています。それによると、2023年の投資、イノベーション、実装の3点からみた国別・地域別ランキングの1位は米国です。一方で日本は12位です。

T:日本は12位ですか。まさに今が踏ん張りどころですね。

神様:米国の強さの背景にあるのは、インフラ面での優位性です。国内に膨大なデータセンターを構築していることがAI開発に活かされています。米国にならい、データセンターの強化が日本国内で必須であることを考えると、関連する日本企業にとってはチャンスであると言えるでしょう。

T:世界的なトレンドに乗り遅れないようにしたいですね。今後に期待したいと思います。

神様:また一方では、生成AIではGAN(敵対的生成ネットワーク)など「教師なし学習」を用いた生成の研究・開発も盛んに行われています。いかに少ないデータで独自の文章、音楽、デザインなどを作成することができるかも注目されており、単純にデータセンターが多ければ良いというわけではありません。今後の日本らしい技術による発展に期待しましょう。

(この項終わり。次回1/10掲載予定)

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