第375話 EV普及の鍵「全固体電池」、日本で実用化・量産化へ

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:10月12日、自動車業界で大きな話題となったニュースがありましたが、ご存知ですか?

T:いいえ、把握していませんでした。何があったのでしょうか?

神様:トヨタ自動車と出光興産が、電動自動車(EV)の次世代電池とされる「全固体電池」の量産化に向けて協業することを発表しました。今後、固体電解質の量産技術開発、生産性向上、サプライチェーン構築に両社で取り組むことになります。

T:それは良いニュースですね。全固体電池は、リチウムイオン電池に見られる発熱や発火などの課題を克服する次世代電池(第258話 「グリーン×デジタル」日本強み持つリチウムイオン電池に期待)として注目されています。中国や韓国がリチウムイオン電池のシェアを拡大する中、日本としては原材料などのサプライチェーンの維持・強化とあわせて、全固体電池の開発を促進していくことが課題(第359話 各国厳しい排ガス規制 車載用リチウムイオン電池の世界市場が拡大)でした。実現に向けてぜひ成功してほしいです。

神様:おっしゃる通りです。全固体電池はEV普及の鍵とも言えるでしょう。全固体電池とは、リチウムイオン電池で使用される液体の電解液を固体にしたもので、液体に比べて発火や爆発の危険性が低下します。エネルギー密度が高いので、同じ大きさの電池で比較すると全固体電池を使うことによって航続距離を伸ばすことができます。

T:EVは1回の充電で走行できる距離が伸びることが、普及への課題点として挙げられていました(第298話 次世代自動車「xEV」急速に普及へ 鍵となる技術とは?)。全固体電池が実用化・量産化されれば、EVのさらなる普及へ大きな一歩を踏み出せますね。

神様:富士経済の調査によると、2040年の全固体電池の市場規模は3兆8,605億円と予測されています。これは、BEV、HEV、PHEV、FCEVなどの「xEV」だけでなく、「電力貯蔵システム(ESS)」や「ドローン」、「空飛ぶクルマ」(第302話 2025年万博で導入へ 交通を変える「空飛ぶクルマ」とは?)といった飛行体などへの搭載も期待されています。

T:空飛ぶクルマは2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)での運航に向けて開発が進んでいるようです。私も見られることが楽しみです。ところで、電力貯蔵システム(ESS)とは何でしょうか?

神様:電力貯蔵システム(ESS)とは「Energy Storage System」の略で、主に電力の安定供給に課題がある再生可能エネルギーの分野で活躍が期待されています。例えば、家庭で太陽光発電を行った場合、ESSを利用すればソーラーパネルで作った電力を蓄電しておき、電気代が割高な時間帯に使用することができます。その他、地震や台風、火災などの自然災害への備えなど、今後の需要の高まりが予想されます。

T:ESSには現在、リチウムイオン電池が使われているわけですね。全固体電池が使えるようになれば、より効率的に多くの電力を蓄電することができるということですか。ところで、全固体電池はいつ頃に実用化が実現できるのでしょうか?

神様:トヨタ自動車と出光興産によれば、2027年~2028年に全固体電池の実用化を目指しています。

T:あと4年程で自動車業界にも大きな変化が訪れそうですね。

神様:次世代電池では全固体電池以外にも、市場規模はわずかではありますが、ナトリウムイオン二次電池、金属空気二次電池なども育ちつつあります。それぞれに特徴のある使い方をされていくと考えられています。その辺りも調べてみると面白いかもしれません。

T:いずれにしても、全固体電池が実用化することでカーボンニュートラルの実現に向けた大きな一歩となりそうですね。今後の動向に期待します。

(この項終わり。次回11/29掲載予定)

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