第369話 アフターコロナの消費回復が本格化 アパレル業界で恩恵を受けるのは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:昨年11月に、アパレル業界のお話をしたことを覚えていますか?

T:はい。アフターコロナで人流が回復し、カジュアル衣料品を中心に売上高が回復してきている(第327話 コロナ禍のアパレル業界 カジュアル衣料品に回復の兆し)というお話でしたね。現在もその動向は変わらないでしょうか?

神様:はい。国内アパレル市場はコロナ禍で縮小傾向にありましたが、現在は引き続き、回復の兆しが見えているところです。

T:ちょうど今、夏から秋、秋から冬へと衣替えをする時期ですから、冬服の購入を検討している人も多いでしょう。消費の動向が気になるところです。

神様:前回もお話しましたが「ファストファッション」を中心に比較的低価格な商品が売れています。その一方で、1世帯あたりの洋服の支出額が伸び悩んでいるというお話もしました。実は現在、アパレル業界ではビジネスのあり方をめぐって大きな変化が起きています。

T:そう言えば前回も「大量生産・大量消費・大量廃棄」の見直しが進んでいくのではないか、という話題も出ましたね。これも関係あるのでしょうか?

神様:詳しくお話していきましょう。そもそもこれまで、アパレル産業のプレイヤーは川上(製造)、川中(卸)、川下(小売)に大別されていました。川上(製造)での取引価格、つまり製造販売価格のことを下代(げだい)、川下(小売)での小売販売価格のことを上代(じょうだい)と言います。

T:川上が下代で川下が上代とは、なんだかややこしいですね。

神様:“お金・価格の流れ“に注目してください。アパレル産業では、メーカーが製品をつくり、その製品を卸業者が仕入れ、小売へと販売する流れが中心でした。そのため価格の決定はメーカーが行っていました。ところが、大量販売ができる業態が発達するにともない、価格の決定権は次第に小売へと移るようになりました。

T:なるほど。昔はメーカーが衣類の価格を決めていたものが、お客様に近い小売が決定するようになったということですね。よく見ると、価格決定権を失ったメーカー側は利益配分が少なくなっていますね。

神様:さらに現在は、そこから発展した業態「SPA」が登場しました。SPAとは何か、ご存知ですか?

T:SPAとは、小売が商品の企画、生産、販売までを一貫して手掛ける業態のことですね。

神様:その通りです。SPAは製造を外部に委託することが多いのですが、その他はすべて自前で行うため、粗利を確保しつつ低価格で商品を提供することができます。商品提供までのリードタイムも短く、小売の立場から顧客のニーズに合わせた商品を提供できることも大きな強みです。

T:例えば、先ほどの利益配分イメージで「現在」と「SPA」を比較し、下代2,000円、上代10,000円(粗利4,000円)で販売されていた洋服で考えると、下代は同じ2,000円として、上代を4,000円(粗利2,000円)で売れば、粗利率を40%から50%へアップすることも見込めますね。

神様:それが「ファストファッション」を中心とした低価格でも良い品質の衣類を提供する企業の強みです。アフターコロナでこれから本格的な消費回復を迎える中で、アパレル業界で恩恵を受けるのはSPAになると期待されます。また、ビジネスの形態の変化によって、今後の日本のアパレル業界がどのように発展していくのかが問われています。

T:まずはSPAに注目、ということですね。

(この項終わり。次回10/18掲載予定)

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