第368話 成長する世界の医療機器市場 高齢化先進国・日本のメーカーに期待

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、秋風が吹く公園を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:9月18日は敬老の日でした。一般的に65歳以上の人を「高齢者」と呼んでいますが、Tさんは、世界で最も総人口に占める高齢者の割合が高い国はご存知ですか?

T:それは、日本ではないでしょうか?

神様:その通りです。日本の総人口に占める65歳以上人口の割合は29.1%で世界一です。では2位は?

T:え、2位ですか?わかりません。米国でしょうか?

神様:2位はイタリアです。人口の24.5%が65歳以上です。3位はフィンランドで23.6%。米国は17.6%です。高齢者の人数で見ると、日本は3,623万人、イタリアが1,440万人、フィンランドが131万人です。

T:日本の高齢者が圧倒的に多いですね。

神様:世界全体の65歳以上の人口割合は10.0%です。今後は総人口が増えていくだけでなく、高齢化も急速に進んでいくと見られます。内閣府によれば、2060年には世界の総人口は101億5,147万人になる見込みで、高齢化率は17.8%まで上昇する見込みです。

T:約40年後には約18億人が65歳以上ということですか。現在の世界人口は80億人ですから、約8億人が65歳以上です。2倍以上に増えますね。高齢者において先進国である日本はぜひここでメリットを生かしたいところです。

神様:今注目すべき分野は、医療機器でしょう。日本を中心とした先進国では、高齢化の進展と慢性疾患の増加に伴い、医療機器市場の拡大が続いています。今後も医療技術の向上が医療機器のさらなる高度化、そして需要の増加を促していくでしょう。医療機器の世界市場は安定した成長が続くと見込まれます。

T:私たちも、これまで医療分野に数多く触れてきました。日本は医療機器において世界の先端を進んでいると思います。今後が楽しみな分野ですね。

神様:世界の医療機器市場で、国別の売上高で見た場合、割合が最も高いのは米国です。実に40%以上を占めていると言われます。次が日本で、約7%を占めていると言われています。その後にはドイツ、中国、フランスと続きます。

T:日本の2位も素晴らしいですが、医療大国・米国のシェアは圧倒的ですね。

神様:新興国でも、人口増加と経済発展にともなって高度医療へのシフトが進んでいます。医療体制が整備されるとともに医療ニーズも変化していき、これから様々な医療機器の需要が高まるでしょう。

T:つまり、日本の医療機器メーカーにとっては、そういった国・地域への輸出が鍵を握ることになる、ということですね。

神様:政府は今、国内医療産業の海外展開を支援する取り組みを進めています。日本のメーカーは、特に内視鏡や超音波診断装置等、診断機器の分野で高い国際競争力を持っています。2021年の医療機器輸出額は、前年比で3%増となる1兆295億円へ拡大しました。今後の動向に注目しましょう。

T:ニコチン依存症治療アプリのような「DTx」(第341話 アプリで治療する時代へ 期待の医療「DTx」とは?)もこれからどんどん日本で開発されることを期待したいですね。

神様:おっしゃる通りです。これまで医療機器は、病院内など医療機関内にあるものでしたが、これからは個人が所有するスマートフォンなどで動く医療機器も増えていくと思われます。医療のICT化が進み、医療機器分野でも新たな需要が創出されていますが、日本企業の活躍はまだまだ未知数です。さらに、手術ロボットのような革新的な医療機器により、これまで難易度が高かった疾患の治療も可能になってきました。成長していく市場の中で、日本の各医療機器メーカーがどれだけ成長できるか、今が大切な時期であると言えるかもしれません。

(この項終わり。次回10/11掲載予定)

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