第366話 家計を圧迫「値上げ疲れ」も 食料品の値上げは今後も続く?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:帝国データバンクは8月31日、9月の「食品主要195社」価格改定動向調査を公表しました。これまで、調査対象となる195社のうち9割超の企業が、前年から1回以上の値上げを行いました。2023年単年で見ると約8割となる159社で値上げを実施したか、これから値上げを予定しているようです。

T:毎月のように何かが値上げされていますね。食品については、昨年よりも今年の方が値上げされている商品が目立つように思います。

神様:家庭用を中心とした飲食料品の2023年内値上げ品目数は、年初から6月30日までで2万9,106品目に上りました。2022年の値上げ品目数は2万5,768品目とされていますから、2023年6月末で前年の累計を超えたことになります。

T:昨年よりも早いペースで食品や飲料品の値上げが進んでいるのですね。私の家庭でもどんどん家計が圧迫され、日々ため息が出ています。今後も値上げは続くのでしょうか?

神様:帝国データバンクによれば、9月の食品値上げは2067品目となり、前年比で2カ月連続減少しています。昨年に比べると値上げ機運に鈍化が見られるようです。

T:ということは、今後は値上げも落ち着いてくるのでしょうか。

神様:少なくとも、年内の値上げは減少する可能性があります。また、原材料価格の高騰も多少落ち着いたとの見方もあるようです。また足元では、物価上昇に比べて家計の食費支出の勢いに陰りが見られます。値上げ後に店頭での売れ行きが伸び悩む飲食料品も出始めました。食品の値上げに対して消費者の購買力が低下する「値上げ疲れ」が食品の売上に影響を及ぼし始めているようです。

T:値上げや物価高騰の要因ですが、昨年のお話では新型コロナウイルス感染症に伴う商流の分断、ロシアによるウクライナへの軍事進攻や円安の影響(第314話 “値上げラッシュ“をチャンスに スーパーで注目される「PB商品」)が挙げられていました。その他にも要因はあるのでしょうか?

神様:2023年の飲食料品の値上げ要因は、原材料高やエネルギー費等に起因するものが大半です。コロナ禍による経済の混乱は落ち着いてきましたが、ウクライナ侵攻や原油高、円安などの影響もあります。さらに、世界人口の増加や所得の上がった国による需要の増加なども、コストの上昇に影響を及ぼしているようです。

T:値上げには様々な要因が複雑に絡み合っているのですね。すぐにどうにか解決できるものではないのかもしれませんね。

神様:原材料高やエネルギー費については、来年もコストが上昇する懸念がありますから、企業努力で解決できるものでもありません。政府では、これらの物価上昇への対策として賃金の引上げ等を考えています。物価の上昇は、見方を変えれば賃金引上げのチャンスでもあります。

T:なるほど。投資家目線で見れば、値上げを行った各企業が、獲得した利益をどのように使っているか?を見れば良いわけですね。

神様:その通りです。今後の飲食料品については、単純な価格改定や内容量を減らす実質的な値上げではなく、消費者に対して価格に納得できる美味しさを提供することが、ブランド価値の向上にもつながるでしょう。また、賃金の引上げなど、従業員の働く環境の向上も良い循環を生むでしょう。値上げの流れは止められなくても、そういった“企業努力”を見られるかが業績につながっていくと考えます。

T:商品の値上げという側面だけでなく、商品価値や企業価値の向上があるのかをしっかり見ることが大切、ということですね。しかし家計目線で言えば、賃金引上げが早く行われてほしいところです。

(この項終わり。次回9/27掲載予定)

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