第364話 「働きがい」が重要指標に 従業員エンゲージメントサービスの活用拡大

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、夕暮れの公園を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:令和5年5月8日に新型コロナが5類に移行してから4カ月が経ちました。これまでたびたび取り上げてきましたが、今日は企業と従業員の働き方についてお話しましょう。

T:「ワーク・エンゲージメント」(第321話 “人への投資“で重要性増す「ワーク・エンゲージメント」とは?)ですね。

神様:よく覚えていますね。現在、企業では「ワーク・エンゲージメント」の重要性が高まっています。コロナ禍でテレワークの導入が進み、仕事の仕方が大きく変わりました(第198話 増える在宅勤務 テレワークに注目集まる)。テレワークでは、通勤時間が掛からないことや、子育て・家事との両立など、時間を有効に使えるメリットがありました。一方で企業側から見ると、社員個人の仕事ぶりが見えなくなりがちであり、生産性に不安な点があることも明らかになりました。社員同士のコミュニケーションが不足しがちになり、孤独感や不安感が高まることも、デメリットとして取り上げられました。

T:会社という場に社員が集まることで、仕事に対する一体感が生まれ、生産性を向上させることができることに納得感はあります。最近では、全く会社に出社しない「フルリモート勤務」への見直しが進んでいるようですね。

神様:とは言え、自宅でのリモートワークのメリットは大きいものです。また、オンライン会議システムなどを使い、どこでも仕事ができることで仕事の幅は広がりました。最近ではリモートワークと出社を併用したハイブリッドワークが主流になりつつあるようです。

T:仕事の生産性を上げるためにはどうすれば良いのか?を考えた結果、たどり着いた結論ですね。

神様:企業の人事領域において「エンゲージメント」とは、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」を言います。エンゲージメントは生産性の向上に結び付くとの研究結果もあり、経営戦略の一つとして位置付ける企業が増えています。エンゲージメントを高めるために、ある程度の出社が必要なのかもしれません。

T:以前のお話では、従業員の働きがいなどを表すエンゲージメントスコアを測る需要が拡大しているとのことでした。

神様:その通りです。今後も需要は拡大していくと見られています。矢野経済研究所は、2022年の国内の従業員エンゲージメント診断・エンゲージメントサーベイを提供するクラウドサービスの市場規模を調査しました。それによると、2022年の市場規模は66億円で、2027年には140億円まで拡大する見込みです。2022年からの5年間で年率16%の成長が見込まれています。

T:エンゲージメント診断・エンゲージメントサーベイでは、従業員に対して「企業の成功に対して積極的に貢献したいか?」、「職場内に信頼できる上司や同僚はいるか?」、「仕事を通じて日々の成長を実感しているか?」などを問い、働きがいがどの程度なのかを見るようですね。

神様:SDGsやESGの観点からも「働きがい」を高める取り組みや人的資本経営への関心が高まっています。また、人的資本などの非財務情報をまとめた統合レポートを発行する企業も増えています。2022年の統合レポート発行企業数は前年比で144社増となる884社となりました。2023年1月には「企業内容等の開示に関する内閣府令」等が改正されました。上場企業では、有価証券報告書に人的資本に係る開示を行う義務が課されました。まだ手探りの状況ではありますが、各企業が対応に迫られています。

T:人的資本とは何でしょうか?

神様:経済産業省によれば、人的資本経営とは人材を「資本」として捉え、人的資本の価値を最大限に引き上げることで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方を言います。

T:つまり、従業員エンゲージメント診断やエンゲージメントサーベイによってそれらの人的資本を見える化し、経営目標とすることで企業価値の向上につなげていくのですね。

神様:そういうことですね。働き方も人材も多様化していく中で、エンゲージメント診断・サーベイの活用も増えていくものと見られます。そういったサービスを提供する企業の活躍の場も増えていくでしょう。

(この項終わり。次回9/13掲載予定)

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