第356話 コロナ禍から回復傾向にあるお菓子市場 今後の動向は?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:6月21日、2023年5月の訪日外国人観光客数が公表されました。ゴールデンウィークを含む5月の動向について見てみましょう。

T:2023年は、コロナ禍前の2019年同月と比べて2月は56.6%(第345話 拡大する航空機需要が日本の企業に与える影響とは?)、3月は66%まで回復(第349話 2023年ゴールデンウィークで旅客数好調 今後の航空機需要に注目)していましたね。

神様:5月の訪日外国人数は1,898,900人となり、4月の1,949,100人を下回りました。これは、3月・4月の桜のシーズン後の閑散期であるためと思われます。一方で回復率を見ると、2019年5月と比べて68.5%まで回復し、4月を上回る結果となりました。

T:これは順調に回復し続けているということですね。

神様:訪日外国人は何を楽しみにして来日していると思いますか?観光庁の2022年年次報告書によると「訪日前に期待していたこと」、「日本滞在中にしたこと」で圧倒的に多いのは「日本食を食べること」でした。これは2023年以降も変わらないでしょう。なぜなら「次回日本を訪れた時にしたいこと」でも「日本食を食べること」が圧倒的に多いからです。

T:日本食と言うと、お寿司ですか?

神様:そのようです。農林中央金庫が今年行った調査によると、寿司はどの国の観光客にも一番人気で、その他にはすき焼き、ステーキ・焼肉、天ぷら、うどん・そばなどがよく食べられています。

T:どの料理も本当においしいですからね。

神様:日本食の次に来るのが「買い物」です。お土産を買うことも含まれるでしょう。訪日外国人の品目別購入率を見ると、圧倒的に多く購入されているのは「菓子類」でした。

T:お土産としては定番でしょうから、やっぱりみんなお菓子を買いますよね。

神様:確かにその通りです。お菓子は単価も低く、選びやすいお土産です。ただ、少し想像してみてください。異国の地のお土産に口に合うかわからない食品を選ぶのは、なかなか勇気がいります。一方で抹茶などの日本のお菓子は海外でも人気です。さらに、日本に来て日本食を食べて感動した人が、お土産にもやはり日本の食品を選んでいるのです。選びやすいというだけでなく、味や品質など、それだけ日本の食に対する信頼感があるとも言えます。

T:なるほど。これからさらに訪日客が増えるとすれば、食やお菓子業界にとっては大きなチャンスになりますね。

神様:ここで、国内の菓子市場を見てみましょう。矢野経済研究所によれば、2023年度の国内菓子流通市場は前年度の推定比で1.9%増となる1兆9,987億円と予想しています。2021年度の菓子市場はコロナ禍の影響で大きく落ち込みました。外出機会が減少したことで、ポケット菓子など外出先で食べられる流通菓子の需要が縮小したことが要因です。しかし、その後は人出が増加し順調に回復傾向をたどっています。

T:お菓子なら巣ごもり特需もあったと思いますが、今後その影響はありますか?

神様:確かに、巣ごもり特需の反動の影響は懸念されていましたが、回避されています。各メーカーによる新製品開発などの努力が需要喚起を促したとみられます。チョコレートを使用したビスケットの新商品の発売やグミ市場がV字回復した動きなどは、SNSやZ世代を上手に味方につけ、ヒット商品を生み出すまでに至りました。

T:まさに、努力の賜物で今の菓子市場回復があるということですね。

神様:一方で、原材料費や製造費などのコスト高に起因する値上げの影響は無視できません。今後採算性を維持するためには、さらなる需要増加が必要でしょう。そのために各メーカーでは努力を重ねていますが、さらなるインバウンド需要への期待も大きいでしょう。

T:なるほど。今後も順調に訪日外国人が増えることを期待します。2025年には大阪万博もありますし、日本の各菓子メーカーによる努力がさらに実を結ぶ機会となりそうです。コロナ禍を乗り越えつつある2023年、菓子業界の動向に注目したいと思います。

(この項終わり。次回7/12掲載予定)

提供:いちよし証券
「兜のささやき」全話はこちら
○当記事は各種の信頼できると考えられる情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保障するものではありません。
また、今後予告なく変更される場合があります。

商号等/いちよし証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第24号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会