第351話 ロボット市場1兆円へ 日本で工場自動化ニーズが拡大する理由とは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェで投資談義を行っています。


T:いや、驚きました。5月19日に日経平均株価が1990年8月以来、バブル崩壊以来となるおよそ33年ぶりの高値となりました。

神様:コロナ禍からの経済社会活動の再開、インバウンドの増加による内需の活性化、大企業を中心とした賃上げに伴う景気への好影響などが意識されています。それに加えて、日銀による金融緩和の継続、東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)1倍未満の企業に対する資本効率改善策の要請もあります。日本固有の好材料が豊富にあることが、この高値につながりました。

T:株価が高いのは嬉しいですね。そして、こちらも本当に驚きました。5月19日から21日まで開催された「G7広島サミット」。広島にG7各国のほか、韓国、インド、オーストラリア、アフリカ、ブラジルなど、世界の首脳が集まっただけでなく、ウクライナのゼレンスキー大統領も来日し、ロシアによるウクライナ侵攻について対面で話し合いが行われました。日本の多くの人が、広島の平和記念公園での献花の様子や記者会見を見たのではないでしょうか。これが世界の平和につながることを心から願います。

神様:平和都市・広島で開催されたこのサミットの3日間は、世界中の注目を集めながら大きなメッセージを発信しました。岸田首相は会見で「世界は今、ウクライナ侵略に加え、気候危機やパンデミックなど複合的な危機に直面している」と発言しました。危機の中で世界経済をどのように安定させ発展させていくか、これは非常に大きなテーマです。

T:この機会を無駄にしないよう、官民力を合わせて取り組んでいくことが大切ですね。

神様:もちろんです。サミットでは、経済的強靱性・経済安全保障についても話し合われました。例えば、現在の日本のものづくり企業にとって、サプライチェーンリスクを回避することは大きな課題です。

T:そう言えば、総理がグローバル半導体企業トップを集めて意見交換会を開催したことも大きな話題になりました。

神様:日本でもサプライチェーンリスクを回避する観点から、企業の生産拠点を国内に回帰させる動きが見られます。一方でそこには一筋縄ではいかない問題もあります。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、日本のものづくり企業が海外企業に比べて競争上不利である要素として、人件費やインフラなどのコストが高い点が挙げられています。

T:製造業では深刻な人手不足に陥っていますからね。海外からいざ国内に工場を移そうと考えても、人件費が障壁になってしまって移転できないとなれば、リスク回避も行き詰ってしまいます。

神様:それを解消する有効な手段のひとつとして考えられているのが「工場自動化」の促進です。これまで、コロナ禍では感染症予防の為のソーシャルディスタンスの維持を目的として工場自動化への需要が高まりましたが、今後は人手不足や生産コストの削減、製造品質の向上など、生産安定化のための対策としてニーズが高まることが予想されます。

T:なるほど。自動化によって人手不足の課題も解決できますし、人件費を抑えながら生産性も向上できれば海外との競争においても遜色ないわけですね。

神様:おっしゃる通りです。工場自動化のツールとしては、人間と同じ空間で作業が可能な「協働ロボット」の市場が拡大しています。矢野経済研究所によると、協働ロボットの世界市場は2022年に前年比で20.5%増となる1,803億円へと拡大しました。10年後の2032年には、1兆538億円まで拡大すると予測されています。

T:今からわずか10年で協働ロボット市場が1兆円規模まで拡大するとは。ロボットは日本が強みを持ち、有力な企業が数多くある業界です。このチャンスを逃さず頑張ってほしいですね。

(この項終わり。次回6/7掲載予定)

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