第350話 ”脱コロナ”宿泊・飲食業で人手不足 アルバイト・パート需要高まる

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられました。街の様子に変化は感じますか?

T:外を歩いていて、マスクをしていない人が増えましたね。飲食店もすっかりコロナ禍前の賑わいが戻った印象ですが、これからさらに活気づくでしょうね。

神様:2020年4月の緊急事態宣言から3年が経過しました。その間ウイルス感染による被害を最小限に抑え、経済活動を再開させることに努めてきました。一歩一歩前進してここまで来たことを感慨深く感じます。

T:本当に、よく乗り越えてきましたね。

神様:しかし一方で、経済活動再開に伴って「人手不足」が大きな課題として挙がっています。

T:空港施設の職員が足りず、保安検査で長い行列ができたという報道もありました。空港だけでなく、飲食店や宿泊施設など、コロナ禍で大きなダメージを受けた業界で人手不足が顕著ですね。

神様:日銀短観の雇用人員判断DIを見ると、2022年に入ってから人員が不足していることがわかります。特に非製造業で不足感が強く、とりわけ宿泊・飲食業界が人手不足に苦しんでいるようです。

T:「雇用人員判断DI」とは何でしょうか?

神様:雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」とした企業の割合を差し引いたものを指します。「DI」とはDiffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略で、雇用人員の過不足の判断を指数化したものです。例えば「宿泊・飲食」をグラフで見ると、コロナ禍が始まった2020年3月から終息が見えてきた2021年末あたりまでは「過剰」が多く、その前後では「不足」が多いことがわかります。

T:グラフでは、宿泊・飲食はコロナ禍前の2019年も人手不足が深刻ですね。

神様:おっしゃる通りです。より長い期間での雇用人員判断DIの推移を見るとわかりますが、非製造業・製造業共に2009年ごろをピークにして雇用人員判断DIは下がっていきます。

T:確か、団塊の世代が定年退職を迎えたのが2007年から2009年あたりですね。

神様:その通りです。先日もお話しましたが、日本が抱える労働者人口の減少(第347話 “AI新時代“到来も追い風? 企業の業務効率化に期待)がこのころから始まっていると言えるでしょう。

T:しかし宿泊・飲食については、業務の効率化で解決する問題ではありませんよね。人を増やさなければ運営も立ち行かなくなるでしょう。

神様:コロナ禍で苦しんだ宿泊や飲食業界は、人員削減に踏み切った企業も多くあります。足元の需要回復に対応するための社員確保には時間を必要とするでしょう。そうなると、当面はアルバイト・パート採用を強化して対応していくしかありません。

T:アルバイトやパートを集めるためには、時給を上げる必要がありますね。

神様:ジョブズリサーチセンターの調査によると、三大都市圏のパート・アルバイトの平均時給について、2023年3月は前年同月比で2.1%増となる1,143円となりました。平均時給は2021年5月以降、前年同月比で増加し続けています。特にフード系では、三大都市圏全体と首都圏で過去最高額を更新しました。今後もしばらく、アルバイト・パート採用の需要が高水準で続くと思われます。

T:アルバイト・パート採用など、人材採用系の企業の注目度はますます高くなっていきますね。業務効率化と共に、今後注目の業界と言えそうです。

(この項終わり。次回5/31掲載予定)

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