第349話 2023年ゴールデンウィークで旅客数好調 今後の航空機需要に注目

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:Tさん、今年のゴールデンウィークは楽しめましたか?

T:はい。久々に家族で泊まりがけの遠出ができました。観光地はどこも大変な混雑で、すっかりコロナ禍前の活気が戻ってきたように感じました。報道を見ると、ゴールデンウィークの国内旅行についてはコロナ禍前の2019年と同等まで回復したようですね。

神様:Tさんのおっしゃる通りです。5月9日に国内航空大手2社が今年のゴールデンウィーク(4月29日から5月7日まで)の利用実績を公表しました。2社とも国内便については総旅客数が2022年を大きく上回り、2018年のほぼコロナ禍前の水準まで回復したようです。

T:やはりそうでしたか。

神様:海外へ旅行に行く日本人も緩やかに回復しています。総旅客数は2022年比で2倍以上となり、2018年と比べると6割から7割程度まで回復しています。

T:なぜ2019年との比較ではなく、2018年との比較なのでしょうか?

神様:2019年は新天皇の即位により5月1日が祝日となり、10連休となった人も多く、例年とは異なる年となりました。2018年は今年に近い連休だったので、2018年を比較対象としているようです。

T:なるほど。確かにそうでしたね。

神様:今後は、米国の水際対策解除や中国の規制緩和などにより、さらに多くの往来が期待できるでしょう。訪日外国人客についても増えることが期待できます。

T:2023年3月の訪日外国人観光客数は1,817,500人と、コロナ禍前の2019年3月の66%まで回復したのでしたね。

神様:ゴールデンウィークを含む5月の訪日外国人観光客数は6月に公表されますので、こちらも注目しましょう。さて以前お話しましたが、今後は航空需要の拡大が見込まれ、航空業界にとっては大きなチャンス(第345話 拡大する航空機需要が日本の企業に与える影響とは?)となります。JADC(日本航空機開発協会)では、世界のジェット旅客機運航機数が2041年末に41,358機と、2021年末の24,055機(一部保管機を含む)から拡大すると予測しています。

T:航空機の製造に関わる日本企業にとっても大きなチャンスである、ということですね。

神様:その通りです。米航空機ボーイングは4月26日、小型機「737」シリーズを現在の月産31機から2023年後半に月産38機に増やすと発表しました。さらに、経済産業省も国内航空機部品の設備投資を支援します。2022年度第2次補正予算で417億円を計上し、サプライチェーンの強化を促す方針です。アフターコロナになり、世界の民間航空機市場は人口増加に伴う経済成長を背景に中長期的な成長が続くと推測されています。日本には民間航空機の機体やエンジンなどの主要部品を手掛けるサプライヤーが多く存在しますから、今後のビジネスチャンスに大いに期待したいところです。

T:あえて航空機需要のマイナス面を見るとすれば、どのようなものがありますか?

神様:もちろん、まったくネガティブな面がないわけではありません。特に、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、地政学的なリスクは十分に考慮しなければなりません。ロシアだけでなく中国と台湾の情勢や、米中の競争などの影響もあるでしょう。さらには、カーボンニュートラルへの取り組みについても気になるところです。航空機業界がこれらに対してどう取り組んでいくのかにも注視すると良いでしょう。

T:なるほど。ちょうど5月19日からはG7広島サミットが開催され、主要先進国の首脳が日本に集まります。日本と世界のより良い未来のため、どのようなメッセージが発信されるか、大きく注目されますね。

(この項終わり。次回5/24掲載予定)

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