第345話 拡大する航空機需要が日本の企業に与える影響とは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:今年のゴールデンウィークはどこかへ出かける予定ですか?

T:久々に家族で泊まりがけの遠出をしようかと思っています。今年は私たちのような家族連れは多いでしょうね。

神様:そうでしょうね。

T:最近街中で観光客と思われる外国人を見かけることが増えてきたと感じています。

神様:日本政府観光局によると、2023年1月と2月の訪日外国人観光客数はそれぞれ約149万人、147万人で、2019年同月比で見ると2023年2月は56.6%と、コロナ禍前と比べるとまだまだですが、今後は増えることが期待できそうです。

T:2019年に比べるとまだ完全な回復ではないのですね。

神様:ちなみに2023年1月と2月の出国日本人数はそれぞれ約44万人、53万人となりました。2019年同月比では2023年2月は35%です。

T:出国する日本人の数も、ゴールデンウィークにはさらに回復しそうですね。これまで厳しい状況に耐えてきた航空業界にとっては楽しみな展開です。

神様:そうですね。ところで、航空業界には「RPK」という指標があります。ご存知ですか?

T:いいえ、全くわかりません。

神様:Revenue Passenger Kilometersの略で、有償旅客が航空機に搭乗して飛行した総距離のことを言います。

T:つまり、航空機に搭乗する客が多いほど、また、旅客を乗せた航空機が遠くへ飛ぶほど、RPKは大きくなるわけですね。

神様:その通りです。IATA(国際航空運送協会)によれば、2022年の業界全体でのRPKは、2021年比で64.4%増となりました。2019年比では31.5%減まで戻しています。世界の地域別で見ると、2019年比で欧州が22.2%減、中南米が14.2%減、北米が11.3%減、中東が25.9%減まで回復しています。

T:アジア太平洋が2019年比で55.6%減なのは、中国のゼロコロナ政策の影響がありそうですね。

神様:人流だけでなく、物流も回復しています。IATAによれば、2022年の世界の航空輸送量は、2019年比で68.5%まで回復しました。このように、世界各国でコロナ禍への水際対策が緩和されるのに伴い、航空需要が着実に回復してきています。また、世界的な航空機大手2社の2022年受注も回復しました。米ボーイングの航空機受注は774機と、2018年以来の高水準となり、欧州のエアバスの航空機受注は820機と、ボーイングを上回る結果となりました。

T:世界的に、航空機需要は今後伸びていく(第319話 訪日外国人緩和で観光回復へ 今後の「航空機需要」に注目)のでしたね。世界の人口は現在増加傾向にあり、国連によれば現在の人口は78憶7500万人が、2050年には90億人を超えると予測されているのでした。

神様:おっしゃる通りです。JADC(日本航空機開発協会)によれば、世界のジェット旅客機の運航機数は、2021年の24,055機から、2041年には約1.7倍の41,358機へと拡大する見通しです。新規の航空機需要と既存機からの代替の航空機需要とを合算すると35,644機が2041年までに納入される計算になります。それが何を意味するか、わかりますか?

T:航空機の製造には多くの日本の企業が関わっていますから、航空機需要が大きくなるほど、それらの日本企業にとってもチャンスということですね。

神様:おっしゃる通りです。ボーイング機には多くの日本企業の部材が使用されています。また、エアバス機についても、素材の一部をロシア製から他国製にシフトする動きが出ています。今後の日本企業の動きに期待しましょう。

(この項終わり。次回4/19掲載予定)

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