第343話 2050年に世界で1億5000万人が認知症…治療薬はできるのか?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、桜の咲く公園で花見をしながら投資談義を行っています。


T:まだ少し肌寒いですが、公園はお花見で盛り上がっていますね。

神様:多くの人が外に出て楽しく過ごせるのは久しぶりですね。自由のありがたみを感じます。

T:特に高齢者にとっては、コロナ禍で家の中でじっとしていることにより心身が弱くなり、高血圧などの症状が進むなど、命の危険に関わることもありました。やっぱり定期的に外に出て楽しめる世の中がいいですね。

神様:散歩をすることは、認知症予防においても有効であると言われています。週に3回から5回、1回につき30分から50分程度の散歩は無理なくできますし、歩いているだけで様々な刺激があります。また、すでに認知症に罹っている人でも、散歩には症状の進行を予防する効果があるようです。

T:そう言えば、昨年もこの時期に認知症のお話をお聞きしましたね。2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症にかかると推計されている(第294話 高齢者5人に1人が認知症に 活躍期待される医薬品業界)のでしたね。

神様:その通りです。しかし、認知症の問題は日本だけではありません。人口の増加や医療の進歩などを背景に、高齢化は今、世界的に進んでいます。世界の高齢化率の推移を見ると日本が圧倒的に高いですが、今後は他の先進地域や中国も高齢化が進むでしょう。さらに、開発途上地域においても高齢化が急速に進展することが予想されています。

T:それはつまり、認知症にかかる高齢者も世界的に増えていく、ということですか。

神様:世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease=GBD)によると、世界の認知症患者数は2019年では5,740万人でした。2050年には1億5,280万人へと増加するとみられています。ちなみに日本だと、認知症の患者数は2020年で約602万人です。

T:末恐ろしいお話です。普段から食事や運動など生活習慣に気を使い、糖尿病などの生活習慣病の予防にも心がけることが大切ですね。

神様:認知症は、脳細胞が高齢化により死んだり、働きが悪くなったりするために様々な障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態を指します。特に、認知症の一番多い原因疾患であるアルツハイマー病では、脳内にアミロイドβ、リン酸化タウというタンパク質がたまり、脳が委縮することで認知症を発症します。最近では、食事のバランスに気をつけ、運動習慣を身につけるなど、普段からの生活管理が認知症の予防に繋がることがわかってきていますから、普段の心がけが大切です。

T:まだ根本治療ができるまでには研究途上かと思いますが、医療の進歩を信じたいですね。

神様:確かに現在、アルツハイマー病を根本的に治療する薬や予防する薬はありません。しかし今年に入り、日本の製薬企業も関わるアルツハイマー病薬が米国において特例によって迅速承認されるなど、大きな進展を見せました。今後は世界中の企業でさらに研究が進み、アルツハイマー病の進行を遅らせる薬、予防薬や治療薬への開発期待が高まります。

T:それは知りませんでした。もし本格的にアルツハイマー病薬が実用化されれば、世界にとっても大きなニュースですし、長期的に大きな需要が見込めそうです。今後の動向に注目ですね。

(この項終わり。次回4/5掲載予定)

提供:いちよし証券
「兜のささやき」全話はこちら
○当記事は各種の信頼できると考えられる情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保障するものではありません。
また、今後予告なく変更される場合があります。

商号等/いちよし証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第24号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会