第342話 新しいNISAスタートへ 「貯蓄から投資へ」本格的な支援に期待

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町のお茶屋さんで投資談義を行っています。


神様:2022年12月16日に「令和5年度税制改正大綱」が公表され、12月23日に閣議決定されました。その中で最も注目されているのは、新しいNISAの導入でしょう。

T:いよいよですね。これまでの「つみたてNISA」と「NISA」が一本化され、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が設けられ、併用が可能になります。また、非課税保有期間が無期限化され、年間投資枠がつみたて投資枠では年間120万円まで、成長投資枠では年間240万円と、合計で年間360万円まで投資が可能になります。

神様:非課税保有限度額が全体で1,800万円と定まっていますが、例えばこれまで「つみたてNISA」で月間最大40万円までしか投資できなかったところが、単純計算で3倍の投資が可能になります。このインパクトは、すでにNISAを利用している人にはわかるでしょう。まだ始めたことがない人にはピンと来ないかもしれません。

T:最近、大学生の娘がつみたてNISAで投資信託を始めました。自分で金融商品を選び、どんなリスクがあるのかもきちんと理解して、納得した上で購入していましたよ。

神様:素晴らしいです。NISAやつみたてNISAの良いところのひとつは、少額からでも投資を始められるところです。

T:娘には、短期的な利益を求めるのではなく、長期的な視野を持ち、分散して投資をしていくことが大事だと話しています。

神様:おっしゃる通りです。さて、内閣官房によれば、2000年から2021年末までの日本・米国・英国の家計金融資産(現金・預金、債券、株式等)を比較すると、米国・英国ではそれぞれ3.4倍、2.3倍伸びている中、日本は1.4倍の増加にとどまっていることがわかりました。また、日本の家計金融資産では現金・預金が過半数を占め、米国・英国と比較して有価証券の占める割合が低いことも判明しています。

T:日本は現金や預金を保持している割合が多いことで、家計金融資産が伸びにくくなっているということですか?

神様:その通りです。これまで多くの日本人が、金融資産を「老後の生活資金のため」、「子どもの教育資金のため」、「病気や災害などへの備え」として保有してきました。いざという時にいつでも使えるように、現金や預金として持っておくことがお金の安全安心につながってきたのです。

T:しかし、安全安心である一方で金融資産としての伸びは少ないため、欧米のように資産が増加することもない、ということですね。

神様:大切なのは金融商品のリスクをきちんと理解し、リスクに対処することでしょう。そのために、長期的に分散して投資することをおすすめします。長期・積立・分散により投資を行うことで、長期的には資産形成に大きな効果があります。それを政府では「貯蓄から投資へ」と謳って進めようとしています。

T:重要なのは、まずは投資への理解を深めること、ですね。

神様:野村総合研究所は、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額を推計しました。2021年の世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」が1億円以上の富裕層、超富裕層の世帯は全体の2.7%でした。一方で、世帯の純金融資産保有額でみると、富裕層、超富裕層の世帯は全体の22.3%を占めます。また、2005年から2021年にかけて、各階層における純金融資産の保有額・世帯数は、金融資産が多い層ほど変化率が大きいこともわかっています。投資やお金についてきちんと理解し、活用する世帯ほど、資産を増やす機会が多いと言えます。

T:新NISAのスタートで、投資への理解を深められる人が増えるといいですね。

神様:NISAだけではありません。東証は、個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として5万円以上50万円未満という水準を明示しています。また、NISA制度の改正に合わせ、株式分割により最低投資単位の引き下げを行う企業も出てきました。今後も「貯蓄から投資へ」を進めるための様々な支援が期待されます。関連業界の動きに注目していきましょう。

(この項終わり。次回3/29掲載予定)

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