第337話 ECで需要堅調 環境の優等生「段ボール」に集まる期待

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海岸を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:今日は、ある意味では「デジタル化」とは最も遠い業界を見てみましょうか。

T:と言いますと?

神様:単純に考えてみてください。DXやデジタル化によって「減るもの」は何でしょう?

T:アナログなものでしょうか?例えば、ハンコとか紙とか。

神様:そう、「紙」です。紙の需要は、新聞や雑誌の電子化などにより年々減少しています。国内の製紙メーカーは、洋紙の中長期的な需要低減により、海外事業や輸出に注力し、他事業を展開するなど、事業構造を転換しつつあります。

T:確かに、デジタル化によって大きく影響を受けるのは、製紙業界ですね。

神様:一方で、紙がなくなることはありませんし、これからも紙パルプ産業は必要不可欠な産業です。国内には300カ所を超える事業所があり、19万人近い雇用を創出しています。また、流通業や林業等の国内産業にも大きな影響を及ぼします。製紙業界は今大きな転換期を迎えていると言えます。

T:紙のリサイクルも進んでいますし、紙の使われ方と言いますか”紙のあり方”が変わっていくのかもしれませんね。

神様:そうですね。例えば、2022年4月から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行されました。覚えていますか?

T:はい。飲食店などで、これまでプラスチックのストローだったものが紙のストローに変わったことがニュースになっていました。プラスチックの代替手段として紙が使われるという発想は新しい試みでしたね。

神様:それから「段ボール」も今注目されています。

T:段ボールは、ECの利用が増えているので需要もあるのではないでしょうか?

神様:その通りです。1990年以降の紙段ボール原紙の需要を見ると、紙・板紙の需要が減る中で底堅い推移が見られます。さらに、段ボールは年々軽量化が進んでいると同時に、行政が回収する体制が確立しています。全国段ボール工業組合連合会によれば、段ボールの古紙回収率は95%以上とのことです。

T:古紙回収率とは何でしょうか?

神様:古紙回収率とは、「古紙回収量」を「紙・板紙消費量」で割ったものです。国内で消費した紙・板紙のうち、国内で古紙として回収された割合を示しています。

T:95%以上ということは、消費された段ボールとほとんど同じ量が回収されている、ということですね。

神様:はい。段ボールは高いリサイクル率を誇り、「段ボールの原料は段ボールである」と言えるほど環境にとって優等生の存在なのです。また、近年は”段ボール以外”の用途でも注目されています。例えば「段ボールベッド」です。

T:2021年に開催された東京オリンピックの選手村で活用されて話題となったベッドですね。意外と丈夫なことに驚きました。

神様:段ボールベッドは保管がしやすく、災害時の備えとしても期待されています。また、長時間同じ姿勢でいることなどが原因のエコノミークラス症候群の予防や防寒対策にも有効でしょう。段ボールは、これからの新たな活用方法の開発に期待が集まっています。

T:紙や段ボールが、地球環境を助ける存在として価値を発揮するのは、これからの時代にふさわしいあり方であると思いました。今後より新たな需要が開発されることに期待したいです。

(この項終わり。次回2/22掲載予定)

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