アメリカの防衛企業シールドAI(Shield AI)が開発中のAI無人戦闘機「X-BAT」同機はかなり特殊な無人機となっています。
「滑走路がなくても戦える」戦闘機が現実になる?
「戦闘機は滑走路から飛ぶもの」――航空機が誕生して100年以上、この常識は揺らぐことがありませんでした。しかし、その前提を覆そうとしているのが、アメリカの防衛企業シールドAI(Shield AI)が開発中のAI無人戦闘機「X-BAT」です。
2026年6月にフランスで開催された防衛展示会「ユーロサトリ」で、シールドAIは実機の約半分の大きさとなるX-BATのモックアップを展示しました。機体はLRV(Launch and Recovery Vehicle:発進・回収車両)の上に垂直に立てられ、その独特な姿は多くの来場者の目を引いていました。
X-BATは、LRVから機体を垂直に立てた状態で離陸し、着陸時も同じ姿勢で帰還する「テールシッター」と呼ばれる方式を採用しています。空中で機体を水平姿勢へ移行することで、通常の戦闘機のように高速で巡航できる一方、滑走路を必要としないため、LRVが設置できる限られたスペースからでも運用できます。
実はこのメーカー、日本でも意外と馴染みがあります。同社の小型無人機「V-BAT」は、艦艇から離着陸できるISR(情報・監視・偵察)機として2025年に海上自衛隊への導入が決まりました。このX-BATはV-BATと同じテールシッター方式を採用しながら、そのコンセプトを戦闘機へ発展させた存在といえます。
エンジンはゼネラルエレクトリック(GE)製戦闘機用ターボファンエンジン「F110」をテールシッター方式に合わせて改修した軸対称推力偏向排気ノズル(AVEN)を搭載します。戦闘行動半径は1000海里(約1850km)で、日本列島を縦断できるほどの距離に相当します。滑走路を必要としない運用方式と組み合わせれば、従来よりも柔軟な前方展開が可能になると期待されています。
開発も着実に進んでおり、エンジン試験や推力偏向ノズルの試験、RCS(レーダー反射断面積)試験、風洞試験はすでに完了しています。2026年後半には、初の飛行試験となる係留飛行試験(Tethered Flight)が予定されています。
“無人機”ではなく「戦闘機」の概念を変えるかもしれない
X-BATが注目される理由は、単に垂直離着陸できるからではありません。最大の特徴は、その戦闘能力です。
担当者によると、実機は全高約8m、翼幅約12m、最大離陸重量約10tとなる予定です。胴体下部には兵器を収納できるウェポンベイを備え、その大きさはF-35戦闘機と同等サイズとされています。さらに必要に応じて主翼下にも兵装を搭載でき、本格的な打撃任務を前提とした設計になっています。
つまりシールドAIが目指しているのは、滑走路不要な「偵察ドローン」ではなく、本格的な無人戦闘機なのです。
近年は、有人戦闘機と連携して戦うCCA(協調戦闘機)の開発が世界的な潮流となっています。しかし、シールドAIが描く将来像は、それより一歩先を見据えています。同社はCCA市場も視野に入れつつ、一方でX-BATを「自律型戦闘機(Autonomous Combat Aircraft)」とも位置付けています。ユーロサトリの会場では、複数のX-BATだけで編隊を組み、自律的に敵を攻撃するコンセプト映像も展示されていました。有人機の”僚機”として運用されるだけでなく、無人機だけで航空優勢や攻撃任務を遂行する未来を構想しているのです。担当者も「現在の戦闘機が行っているあらゆる任務を、この機体でも実施できるようにすることを目指しています」と説明しました。
この発想の背景には、ウクライナ戦争で浮き彫りになった現実があります。航空基地は弾道ミサイルや巡航ミサイル、さらには長距離ドローンの格好の標的となり、航空機を大規模基地へ集中配備するリスクが急速に高まっています。
シールドAIが目指すのは、艦艇や島嶼部、あるいはコンテナ型の発進・回収装置から展開できる航空戦力です。滑走路に縛られず、必要な場所へ分散配置し、そのまま戦闘へ投入する――そんな運用構想を実現するために、テールシッター方式とAI操縦を組み合わせたのがこのX-BATなのです。
本機がもし実用化されれば、「戦闘機は滑走路から飛ぶもの」という100年以上続いた常識そのものが、過去のものになる日が来るのかもしれません。
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